2018/07/04
耳に聴こえている美しさを視覚的なものに変換する
Collin Fletcherはアリゾナ州のテンピを拠点にしているグラフィックデザイナー。エレクトロニックミュージックが好きな人なら、彼の名前を知らなくても彼の手がけてきた作品を一度は見たことがある or 持っているのではないだろうか。Ascetic Houseの初期からデザイン面を支えつつも、Tri Angle、Halcyon Veilといったレーベルのアートワークも多く手がけている。2018年、彼の名前はエレクトロニックのシーンを超えて一気に世界的な広がりを見せている。Drakeがリリースした今年の大ヒットシングル『God’s Plan』が収録された『Scary Hours』のジャケットはCollinが2015年に手がけたRabitのツアーポスターのデザインを流用したものではないかという騒動が起こった。真相は明らかになっていないが、アメリカのメインストリームはアンダーグラウンドに常に注目しているということは言えるかもしれない。さらにアルバム『beerbongs & bentleys』のヒットが世界的な大ブレイクになったアメリカのラッパーPost MaloneのマーチャンダイズもBryan Rivera、Travis Brothers、Dario Alvaらと共に手がけている。メインストリームの仕事をどれだけこなそうとも、常にアンダーグラウンドを自分のホームとするスタンスは多くの人が見習うべきところであろう。今回はCollin Fletcherのインタビューと共に彼の手がけてきた作品の一部を振り返っていく。
– デザインの仕事をどのように始めたんですか?
Collin Fletcher(以下、Collin) – 僕は子供の頃からずっとデザインに興味を持っていたんだ、だから大学ではグラフィックデザインを専攻することにした。大学2年生になってから、色んなライブのフライヤーをデザインしたり、地元でライブするような友人たちのためにデザインやアートワークを提供するようになったんだ。ほとんどがAscetic Houseの関連しているものだったね。僕は自分の作った作品を全部Tumblrに投稿してたんだ。そしたら割とすぐにパンクのアーティスト、エレクトロニックのアーティスト、あとはレーベルにも注目されるようになったんだよ。
– インスピレーションになるものはなんでしょう?
Collin – インスピレーションになるものは仕事によって、それぞれ異なるね。僕はほとんどの場合、ミュージシャンたちと一緒に仕事をしているから、彼らの音楽観を通した高度な共同作業になるんだ。彼らの耳に聴こえている美しさを自分なりに解釈し、視覚的なものに置き換えていくことが、僕にとっての挑戦なんだよ。そのショーが多様なラインナップだったとしてもね。1つのまとまりとしただけではなく、こういったアーティストたちの個性を、どうすれば視覚的に表現できるだろうか? 見かけはクールかもしれないけど、ショーで演奏しているアーティスト達のファンの心には訴えかけられるだろうか?デザインやアートに生じた問題を解決しようとして、素晴らしいインスピレーションが生まれることも少なくはないんだ。それに僕は、デザインにおいて、バウハウスやニューウェイヴ・スイス・ポストモダニズムみいなプロセスベースのムーブメントに、強い影響を受けてきたんだよ。Wolfgang Weingart、Josef Müller-Brockmannとかのね。こういった初期のモダニスト、ポストモダニストのムーブメントは機能的、かつ有益なデザインにとって、美しく抽象的な解決策となることが、わかったからね。それらには関連性こそないけれど、熟考した上での視覚的実験や、その結果があるからね。
– 現在、デザイン以外の仕事をしていますか?
Collin – 僕はフリーランスでグラフィックデザインを仕事にしているんだよ。僕の毎日の仕事の多くは、ニューヨークやデトロイトのプロモーターのために、フライヤーを作る(あるいはアップデートする)ことなんだ。ほとんどの人は、僕の仕事を異端なものとして見ていると思うけど、実はそうじゃないんだ。実際のところ、現時点で自分の制作した物の5%くらいしか投稿していないんだよ。でも最近は、日々の仕事が変化してきている。ヒップホップのツアーで販売されるマーチャンダイズや、アルバムのリリースが増えているんだよね。
去年の秋、自分が卒業したグラフィックデザイン・スタジオの1年生に講義したんだ。今学期も、同じクラスで講義することになっている。だから非常勤講師も、僕の仕事だと言えるよ。
– Tri Angle、Ascetic House、Halcyon Veilなどのレーベルはあなたと深い関係性にあるのでしょうか?
Collin – Rabitのアルバム、『Communion』が2015年にTri Angleからリリースされて以来、Robin(Tri Angleファウンダー)はアルバムがリリースされるたびに、僕を専属のデザイナーみたいにしてくれている。Tri Angleからアルバムが出る場合には、常にミュージャンからアートディレクションの指示が来るんだよ。だから、僕は彼らの視覚的な側面のコンセプトを実現するよう努力しながら、それがレーベルのイメージと微妙に合致するようにもするんだ。Eric(Rabit)と僕は、Rabitに関係する仕事のあらゆる面で、共に働いてきた。その多くはHalcyon Veilに関連するものでもあるんだ。Halcyon Veilに関するあらゆるものが、たいていEric C. Burton、Lane Stewart、Jesse Osborne-Lanthier、そして僕自身らが、ミュージシャンのアートやデザインとコラボしたものなんだよ。
さっきも言ったように、僕はずっとAscetic Houseのためにデザインを続けてきた。Nick Nappa、JS Aurelius、Andrew Flores、そしてこのレーベルで働くみんなが、僕の隣人であり友人なんだ。僕はアートとデザインでJSとコラボするとともに、ここ数年はカセットテープをプリントしたり折ったり封入したりって作業を手伝ってきたんだ。僕たちはアイデアを共有して、ショーのブッキングをして演奏もするのさ。それが、僕のクルーなんだ。
– How did you start design works?
Collin Fletcher – I always had an interest in it growing up and therefore decided to study graphic design in college. It wasn’t until my second year there that I started making show flyers and offering design or art to my friends putting out music locally, which was mostly Ascetic House affiliated. I was posting all this work on Tumblr, which helped my work gain traction pretty quickly with other punk or electronic artists and labels.
– What is that inspiration?
Collin Fletcher – The inspiration is always different per job. Since most of the time I’m working with a musician or other artist, there’s a high level of collaboration taking place in seeing through their own vision for their music. My challenge is always to interpret a sonic aesthetic into something visual, even if its something like a diverse lineup for a show. What would visually represent each of these artists on their own as well as together in one context? It can look cool but does it speak to the fans of every artist playing the show? Oftentimes the most inspiration comes out of that problem-solving approach to design and art.
Besides that I’ve always been very influenced by process-based movements in design like the Bauhaus and New Wave Swiss Post-Modernism. Wolfgang Weingart, Joseph Müller-Brockmann, etc. These early modernist and post-modernist movements found beautiful abstract solutions for functional, informative design. They didn’t have references, they had deliberate visual experiments and results.
– Do you have job except the design? Usually what do you do?
Collin Fletcher – I’m fully self-employed doing graphic design. A lot of my day-to-day work has been making (and updating) flyers for show promoters in New York and Detroit. I see most of that as non-canonical to what most people associate with my work. I really only post like 5% of my output at this point. But things have been shifting in my daily practice a little lately, moving more towards tour merch and releases in the rap / hip-hop world.
Last Fall I taught a freshman Graphic Design studio class in the program I graduated from. I’ll be teaching that class again this semester, so part-part time instructor counts as a job for me also.
– Are Tri Angle, Ascetic House, Halcyon Veil good and deep relations?
Collin Fletcher – Since Rabit’s Communion came out on Tri Angle in 2015, Robin’s kept me around as the sort of in-house designer for every release. The art direction always comes from the musician when on Tri Angle, so I’m usually helping execute their concept for the visual aspect, while maintaining subtle consistencies for the label. Eric and I have worked together on practically everything related to Rabit, so a lot of that has been Halcyon Veil related also. Anything HV is usually Eric, Lane, Jesse, and myself collaborating on the art and design with the musician.
Like I mentioned earlier, as long as I’ve been doing design it’s been for Ascetic House. Nick, JS, Andrew, and everyone else involved in the label are my neighbors / best friends. I’ve helped print and fold every tape batch from the last few years as well as collaborated with JS on art and design. We all share ideas, book and play shows together. That’s my crew.
category:FEATURE
tags:Ascetic House / Collin Fletcher / Halcyon Veil / Travis Brothers / Tri Angle
2018/06/04
Nine Inch Nailsの新作のアートワークを手がけるデザイナー、Ascetic House共同ファウンダー、s.M.i.L.e.レジデント、Destruction Unitのギタリスト、そしてソロとして。 2015年にSacred Bonesからリリースされた「Negative Feedback Resistor」以来の新作が待たれているインディとサイケとノイズが混ざり合ったバンドDestruction Unitは、メンバーそれぞれのソロ活動も近年活発になってきている。特にドラマーAndrew Floresのテクノ/ハウス名義Jock Clubのここ数年のリリースラッシュ、そして今回の主人公、ギタリストのJS Aureliusは数々のプロジェクトを同時にこなし、シーンの枠を縦軸にも横軸にも切り開いて進んでいっている。彼は同じくDestruction UnitのメンバーNick NappaとともにMarshstepperとしてUKミニマル/インダストリアルテクノ名門Downwardsからレコードをリリースしたり、自身も共同ファウンダーとして運営するレーベルAscetic HouseやHelmのAlterなどからソロ名義としてのリリースも重ねている。2017年には同年に発足したアンダーグラウンドにおいて今最も注目されているイベント/コレクティブs.M.i.L.e.のレジデントメンバーになり今までになかった横のシーンの繋がりを見せている。 さらに、ここ数年デザイナーとしてメインストリームから注目され始めており、グラミー賞もアカデミー賞も受賞経験のある大御所Trent ReznorことNine Inch Nailsの今年6月リリースの新作のアートワークをTravis Brothersと共に担当している。2年前にはJay Zが創設したストリートブランドRocawearが彼のデザインを盗用したのではないかというニュースが音楽メディアやSNS上で話題になったこともあったし、今も新たにメインストリームのデザインワークを行っているという噂もある。そんな多忙を極める中、6月にソロ名義としての初来日が決まったJS Aureliusにメールインタビューを行った。インタビューと共に彼のデザインも振り返っていきたい。 – あなたはミュージシャンとしてDestruction Unitのギタリスト、Nick NappaとのユニットMarshstepper、ソロ名義などでの活動、さらにレーベルAscetic Houseの共同ファウンダーとしての活動など、複数のプロジェクトを並行して行っています。それぞれどのようにスタートしたのでしょうか? JS Aurelius (以下JSA)– 小さい時に音楽を始めたんだけど、すぐに幻滅してやめてしまった。18歳になって新たにPigeon Religionというバンドを友達何人かと始めた。アンチミュージックを目指していて、主にギターのフィードバックとドラムで構成されたノイズロックバンドだったんだ。当時はみんなに本当に嫌われていた。けど、今でも続いている友人関係のほとんどが、そのバンドの頃のものなんだ。Ascetic House、Marshstepper、それに自分のソロ。Pigeon Religionで築き上げた道を進んでいなければ、どれも存在してなかったはずだ。そうは言っても、子供の頃、アリゾナにはコアな音楽のコミュニティが存在していて、すごく盛り上がっていた。子供ながらに、ハードコアやグラインドコアのショーを見にいっていたよ。Graves At Seaや、Rotozaza、Warfair?と言った地元のバンドを見て、自分でも主にパンクやハードコアのバンドのショーをブッキングし始めた。その後すぐにノイズのシーンを発見して、次はノイズバンドとパンクバンドを一緒にブッキングしたんだ。当時同じようなことをしている人が数人いて、本当に素晴らしいショーや音楽につながる相互作用を生み出していたんだ。Destruction Unitは、僕がメンバーに加わるずっと前にRyanが始めていたんだけど、そう言った様々な音楽シーンが一緒になり始めた頃に僕たちは出会って、ジャムセッションするようになった。そして今、僕たちはこうして、基本的にはその頃とおんなじことをしているんだ。 – 音楽を制作するときは何を考えていますか?何かに影響されますか? JSA – サウンドというのは、エネルギーが存在しているという表れの1つにすぎないんだ。そして音楽というのは、僕たちが音の配列を自覚しているというだけ。僕たちの心と体は共鳴する分子から成り立っていて、だから単に、目に見える形での音が表れているにすぎない。このことを念頭において、サウンドを積極的に追求することを決めたんだ。捉えにくい微細なものから分かりやすいものまで、サウンドが変化をもたらす可能性を僕は理解している。僕たちのDNAそのものが、チューニングしたり、拡張できるんだ。このことを自覚していると、音楽を爆発させることができる。 – あなたが参加している新しいコレクティブs.M.i.L.e.について詳しく聞かせてください。どのような経緯で参加することになったのですか?とても興味深いメンバーが揃っているように見えます。新しいシーンが作られているのでしょうか? JSA – s.M.i.L.e. は、x/o、Baby Blue、Jade Statues、Sebastian Ruslanが2017年5月に結成した。この4人は長年にわたって、最高のショーをブッキングし、演奏してきた。 s.M.i.L.e. を始めてすぐに、彼らは私にメンバーに加わりたいか尋ねてきたんだ。バンクーバーで彼らがやってきたことに対してすごくリスペクトしていたから、イエスというしかなかった。魔法のような出来事だったよ。s.M.i.L.e.や NuZi、Sacred Sound Clubがバンクーバーで育もうとしているコミュニティは生き生きとしてるし力強い。これからが本当に楽しみだよ。 – あなたのアートワークはシーンに良い影響を与えていると思います。どうやってインスピレーション得ていますか? JSA – ビジュアルアートの無限の限界を探ることだね。 – Nine Inch Nailsの新作「Bad
2018/11/08
アルバム『Life After Death』のリワーク5曲収録のEPを今月末リリース。 先月リリースされたRabitのニューアルバム『Life After Death』から早くも新作EPのアナウンスとなった。今回の『Toe In The Bardo Pond』は『Life After Death』のセルフリワーク作品となる。5曲入りのこのEPはデジタルで今月23日にHalcyon Veilよりリリースされる。先行で『Rebirth II』が公開。EPのデザインは今回もCollin Fletcher、写真はLane Stewartが担当。 さらにリリースに合わせてアジアツアーも発表された。上海のALLから始まるツアーはGenome 6.66 Mbpがサポート。このツアーには日本は含まれていない。 Tracklist 01. ‘Rebirth (Smoked Out)’ 02. ‘Rebirth II’ 03. ‘Rebirth 33’ 04. ‘Rebirth 4’ 05. ‘Rebirth 5 (Voidness)’ Halcyon Veil Tour hosted by Genome 6.66 Mbp Nov 30 – Shanghai @ ALL Dec 01 – Shenzhen @ Oil Dec 07 – Bangkok @ Shade & Shadow Dec 08 –
2020/04/25
2010年〜2020年 〈Tri Angle〉がTwitterで昨日閉鎖を発表。レーベル10年の歴史に幕を閉じた。 2010年、インディブログ隆盛の時代に最も信頼のおけるブログの一つだった20jazzfunkgreatsのライターだったRobin Carolanによってスタートした〈Tri Angle〉は海外音楽メディアをはじめ、Björkもその功績を讃えるほどに音楽史に残した爪痕は大きかった。初期はBalam Acab、oOoOO、How To Dress Well、Holy Otherなどを輩出。”ウィッチハウス”をメインストリームに響かせるほどに拡張させたのはこのレーベルである。その後もクラウドラップを代表する存在Clams Casinoや、寡作のカリスマEvian Christ、『ミッドサマー』の音楽も担当したThe Haxan Cloak、レーベル最高の異形カルトSd Laika、さらにAlunaGeorge、Forest Swords、Fis、Vessel、Rabit、serpentwithfeet、Loticなど。彼ら彼女らの辿った道を見ると、このレーベルの偉大さがよくわかる。 〈Tri Angle〉は最後に10年の歴史を総括したプレイリストをSpotifyで公開している。
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東京・大阪を回るジャパンツアー開催
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