魂の渇きと再生をめぐる旅|鯖がデビューアルバム『枯渇』を発表

愛の欠如、感情の沈黙、孤独の痛み、自己の喪失

 

 

精神的な渇望と再生の深淵を探求する、東京拠点のアーティスト。鯖(Saba)のデビューアルバム『枯渇(Hollowed)』は、魂の渇きと再生をめぐる16曲の旅路を描き出す。

 

仙台拠点のトラックメーカー・24NEETが全曲を手がけ、作品は静かな巡礼のように展開していく。その中心にあるのは「枯渇」——空洞感。人の力では決して満たせない渇き。愛の欠如、感情の沈黙、孤独の痛み、そして自己の喪失。だが、そうした荒れ果てた地にこそ、恵みは芽生えはじめる。

 

鯖は、塵にまみれながらも呼吸を求める者のように、記憶の断片を掘り起こし、自らの魂との静かな対話へと入っていく——新たな生命を与えられるための旅へ。物質的な輝きを超えて、鯖は鮮やかな記憶と内省的なモノローグのあいだを行き来する言葉を紡ぐ。過去の記憶は「タイムカプセル」に喩えられ、「あの頃の光、まだ覚えている」といった言葉が呼び起こされる。また別の曲では、「埋もれたくない」「羽は渡さない、私は生まれ変わる」(「Ageha」)といった祈りのような言葉が、光に応える魂の目覚めのように響く。アルバムは、空虚な状態から始まり、中盤で記憶と対話へと潜り、やがて祈りと応答を経て“光”へ向かう構成になっている。3つのスキット(トラック1・6・9)が物語の転換点となり、2023年の楽曲「私をわすれないで」「butterfly kiss」は新たにリマスターされ、過去と現在をつないでいる。

 

24NEETによる退廃的で繊細なサウンドスケープは、荒野の静けさと深海の息遣いを想起させる。ピアノとエレクトロニカを中心に精巧に構築された音像は、聴き手を内側へと導く——静寂を抜け、緊張を抜け、穏やかな光へと。

 

アートワークには、割れた大地から祈りを捧げる鯖の姿が描かれている。「限界まで乾いた場所にしか生命は芽吹かない」という信念を視覚的に表現した。

枯渇から光へと向かう44分間の旅路を歩む中で、あなた自身の記憶にも一筋の恵みの光が触れますように。

 

 

以下、鯖によるステートメント

 

自分の弱さをようやく認めたとき、静けさの中でひとつの淡い光が姿を現しました。

 

その静けさに立ち返ることは、ある種の喪失のように見えるかもしれない。けれどそれは、私を再び生へと導いたひとつの恵みとなりました。

 

『枯渇(Kokatsu)』はその旅路をなぞる作品——完璧ではないけれど、誠実で、消えていくものを突き抜けて残った余光を捉え、聴き手を再びその静けさへと招き入れるための作品です。

 

 

鯖 – 枯渇

Label : Absurd TRAX

Release date : November 28, 2025

https://absurdtrax.bandcamp.com/album/at-036

 

Tracklist

1. 再生から(Born Again)

2. Ageha

3. 遠泳(Enei)

4. anemone

5. 追憶(Tuioku)

6. あの声(Anokoe)

7. 私をわすれないで(Don’t forget me)

8. タイムカプセル(timecapsule)

9. いのちの水(Inotinomizu)

10. 星の丘(hoshinooka)

11. butterfly kiss

12. グロリア(Gloria)

13. イブのワルツ(The Waltz of Eve)

14. しずかな約束(shizukanayakusoku)

15. 答える(kotaeru)

16. 光へ(Hikarie)

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