Oneohtrix Point Neverがアルバム『Tranquilizer』から「Measuring Ruins」のMV公開

映像はヨシ・ソデオカが手がけた

 

 

Oneohtrix Point Never(以下OPN)が、先週ニューアルバム『Tranquilizer』を発表。3曲が一挙解禁されたことも話題となったが、新たに4曲目となる新曲「Measuring Ruins」がリリースされた。あわせて公開された同曲のミュージックビデオはNYを拠点に活動し、様々なメディアやプラットフォームを革新的に探求することで知られるアーティスト、ヨシ・ソデオカが手がけ、幻想的で超現実的なサウンド世界が見事に映像で表現されている。

 

 

精神安定剤を意味する『Tranquilizer』の出発点は偶然の光景だった。歯医者の椅子に横たわり、歯に響く振動を受けながら、ふと見上げた蛍光灯のカバー。灰色のタイル天井に貼られた、青空とヤシの木のプリント――安っぽい人工の楽園。その瞬間、OPNは問いかける。この世界の音とは何か。日常と非日常がかろうじて均衡を保ちながら共存する、この薄っぺらな現実の音とは。

 

さらに、数年前、インターネット・アーカイブから、巨大なサンプル・ライブラリがインターネットから忽然と消えた事件も創作の引き金となった。90年代から2000年代にかけての何百枚ものクラシックなサンプルCD――シーケンス、ビート、パッド、バーチャル楽器。『サイレントヒル』から『X-ファイル』まで、数え切れない作品に陰影を与えてきた音源たちが、一瞬にして闇に呑み込まれたという出来事。それは文化の断絶、時代の記憶を繋ぐ回線が無慈悲に断ち切られるような体験だった。幸いにも、失われかけた音の断片は再び救出され、文化的アーカイブとして息を吹き返す。本作は、過去への逃避とは何を意味するのか、そしてその先に何が待っているのかを問いかけ、超現実的でディープなテクスチャーで聴く者を包み込む。

 

失われた音の断片をもとに、『Tranquilizer』は音の幻覚を描き出す。静謐なアンビエンスがデジタルの混沌へとねじれ、日常の質感は感情の奔流へと変容する。忘却と廃退に形づくられたレコード。現実と非現実の境界はぼやけ、サンプルはノイズへと溶け込み、夢の中で扉がきしむ音を立てる。今作のOPNは、これまで以上に没入的。ノスタルジーではなく、失われた音を新しい感情の器として再構築している。

 

「このアルバムは、かつて商業用オーディオ・キットとして作られた音源群に形を与えた作品だ。陳腐なサウンドの索引を裏返しにしたようなもの。今日の文化の奥底にある狂気と倦怠を最もよく表現できる、プロセス重視の音楽制作へと回帰した作品なんだ。」 – Oneohtrix Point Never

 

アルバム発表にあわせて解禁された「For Residue」「Bumpy」「Lifeworld」の3曲は、メディアの崩壊、アンビエントな不穏さ、そして儚い美が交錯する、まさにOPNらしい世界が描かれている。

 

アートワークは、インディアナ州を拠点とするアーティスト、アブナー・ハーシュバーガーによって描かれた絵画で、アブナーが育ったノースダコタの平原を抽象的かつ有機的に再構築している。忘れ去られた素材や農村風景に根ざしたそのビジュアルは、『Tranquilizer』のテーマである崩壊、記憶、クラフト感と呼応する。

 

過去20年にわたり、OPNは世界有数の実験的エレクトロニック・ミュージックのプロデューサー/作曲家としてその名を確立し、21世紀の音楽表現を刷新し続けている。初期の『Eccojams』はヴェイパーウェイヴを生み出し、『R Plus Seven』や『Garden of Delete』といった作品はデジタル時代のアンビエント/実験音楽を再定義した。さらに、サフディ兄弟の『グッド・タイム (原題:Good Time)』と『アンカット・ダイヤモンド (原題:Uncut Gems)』やソフィア・コッポラの『ブリングリング (原題:The Bling Ring)』の映画音楽を手がけ、今年最も注目を集める映画のひとつであるジョシュ・サフディ監督作『Marty Supreme』の音楽も担当。またザ・ウィークエンド、チャーリーXCX、イギー・ポップ、デヴィッド・バーン、アノーニとのコラボレーションでも知られている。

 

OPN待望の最新アルバム『Tranquilizer』は、1117 (にデジタル/ストリーミングで配信され、1121 (CDLPが発売される。国内盤CDにはボーナストラック「For Residue (Extended)」が追加収録され、解説書が封入される。LPは通常盤 (ブラック・ヴァイナルに加え、限定盤 (クリア・ヴァイナルも発売。限定盤LPは数量限定の日本語帯付き仕様 (解説書付)でも発売される。さらに国内盤CDと日本語帯付き仕様盤LPは、Tシャツ付きセットも発売決定。

 

 

Oneohtrix Point Never – Tranquilizer

Label : Warp Records / Beat Records

Release date : November 21, 2025

https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=15439

 

Tracklist

01. For Residue

02. Bumpy

03. Lifeworld

04. Measuring Ruins

05. Modern Lust

06. Fear of Symmetry

07. Vestigel

08. Cherry Blue

09. Bell Scanner

10. D.I.S.

11. Tranquilizer

12. Storm Show

13. Petro

14. Rodl Glide

15. Waterfalls

16. For Residue (Extended) *Bonus Track

category:NEWS

tags:

RELATED

FEATURE