テキストと音の関係を考察する|Jiyoung Wiが2ndアルバム『4’44”』を発表

初のサウンド・フィクション・プロジェクト。CD+書籍で発売

 

 

韓国・ソウル出身、オランダ・ハーグ在住のマルチアーティスト・Jiyoung Wiが、最新作『4’44”』を“神聖な女性性”を追求するUKのレーベル〈Doyenne〉より2月12日にリリース。

 

彼女にとって初のサウンド・フィクション・プロジェクトとなり、テキストと音の関係を考察し非画像ベースの媒体の物語の可能性を示唆するものとして、書籍とCDのセット形態での販売となる。

 

 

『4’44 “』は一連の手紙として構成され、各章は会話の一方的な書き起こしで始まる。付属のオーディオ・トラックは、フィールド・レコーディングによって収集された環境音と、7人のスピーカーによる原稿の朗読を組み合わせたもの。

 

韓国語のほか、日本語、中国語、ベンガル語、英語、リトアニア語、トルコ語の6言語が用いられている。あえて複数の言語を使用することで、テキストの文化的、地理的な文脈を単一にまとめず、話者のアイデンティティを不明瞭にするという意図が込められているとのこと。

 

Jiyoung Wi

 

本作のストーリーは、語り手が自身の謎めいた病のさまざまな段階を綴りながら、分裂した精神に頼って生きていく姿を描いていくというもの。

 

家父長的権威がほとんど存在しない世界において、主人公のトラウマは肉体的な病気として現れ、彼女を蝕み、導く共生的な力となり、ロボトミー化された存在の未来を拒むように導く。この物語は、記憶とアイデンティティがどのように具現化され、死がどのようにして抵抗と存在の急進的な形態として現れるかを強調している。

 

タイトルはジョン・ケージの『4’33″』を引用したもので、273秒の長さを持ち、しばしば-273℃、つまり「絶対零度」を指していると解釈される。Jiyoung Wiは11秒を付加し「4’44”」とすることで「他者」について考えるためのインターバルを作り出し、送り手(自己)と受け手(他者)の両方が関わる「手紙を書くという行為」を映し出しているようだ。

 

また、「4」という数字は多くのアジア文化圏で「死」を連想させるものでもある。4分33秒の宙吊りのような雰囲気と、短時間であるにもかかわらず、思索に駆り立てられる瞬間を組み合わせた「4分44秒」の文字は、自己を超えたところにあるもの、死の端にあるものについての瞑想を誘う。

 

 

Jiyoung Wi –  4’44”

Label / Publisher : 〈Doyenne〉 (Doyenne Books)
Release date : February 12, 2025
Format : Softcover, 165 pages, Black-and-White, 128×205mm, CD included
Translation : Dayun Ryu
Editors : Yeasul Shin (Korean), Gye Taekgon (桂澤坤) (English)
Design : Yongwan Jeon
Sound mastering: Lawrence McGuire

Bandcamp : https://doyenne-books.bandcamp.com/album/d-08-jiyoung-wi-444

 

Tracklist :

1.  Me in my flat in N*rth Korea Pt.1
2. Me in my flat in N*rth Korea Pt.2
3. MRI scanner ads on YouTube
4. Tzu Ni in the cursed elevator
5. Rina in the cursed elevator
6. Elif in the free field
7. Gabrielė at the university hospital where she hates working
8. Sohyun in the interrogation room
9. Avita in the unlicensed nursing home
10. … in the …

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