2023/08/30
人生を回想して見えた深層心理作品
シンガポール出身で現在はロサンゼルスを拠点に活動しているNat Ćmiel(ナット・チミエル)によるプロジェクト。yeule(ユール)が自身にとって3作目、〈Ninja Tune〉契約後初となるアルバム『softscars』を9月22日にリリースする。現在アルバムからは「sulky baby」「dazies」「fish in the pool」「ghosts」の4曲が公開されている。
6歳の時に両親に連れられたピアノ教室でクラシック音楽を学び始めたyeuleは、次第にレッスンを受けなくなり独学でギターやドラムの演奏を始め、やがて好きだったゲームの世界や楽曲の魅力にのめり込んでいった。ファイナルファンタジーのキャラクターを由来とするyeuleという名を自らに付け、2014年にセルフタイトルEP『Yeule』でデビューして以来、幽玄で幻想的なサウンドやロンドンでファッションを学び身につけたユニークなアート感覚が熱烈な支持を集め、カルト的な人気を獲得していく。
ノンバイナリーであるyeuleが抱える葛藤・苦悩や、オンライン上の人間関係に依存していた経験、その後現実社会と向き合うことで発見した新たな自分など、様々な感情を投影した歌詞の内容も、yeuleというアーティストを独自の存在たらしめている大きな魅力の一つと言える。壊れたコンピューターコードやエラーメッセージをテーマにした2022年リリースの前作『Glitch Princess』は、バーチャルとリアル双方で発生する様々なエラーやバグをノイズやファンタジックな音色を使い表現し、Charli XCXやCaroline Polachekなどのプロデュースを手がけてきたDanny L Harleなどと共に作り上げた。その世界観とプロダクションは高く評価され、表現者としての覚醒の瞬間が収められた会心作と言える内容だった。
そこから約1年という短い期間を経て早くも届けられた最新アルバム『softscars』は、パンデミック期間中の混乱で人との繋がりが断絶され、親しい友人をオーバードーズで亡くすなど心に大きな傷を負ったyeuleが、自らと向き合いこれまでの人生を回想し、幼少期の自分と対話することで見えてきた深層心理を描いた作品となっている。
yeuleは今作について、「傷跡というメタファーを使ってそれぞれの曲を表現した。傷跡ひとつひとつが柔らかいまま」「心理的トラウマであろうと肉体的な傷であろうと、時間が傷跡を完全に治すことはない。痛みがなくなった後も、傷跡は残る。私の先祖たちが経験して受け継がれてきたことを感じるの。トラウマは消えない。私の人生にはいつも腐敗や歪みがあって、いつも悪いものや醜いものもあった。だから傷跡は、私が守られていることや、私自身を守るべきことを思い出させてくれる」と語り、苦しみや悲しみ、痛みなど過去の様々な経験により生まれた傷跡こそが自分自身を形成する大切な要素になっているということを鋭く大胆な視点で描いている。
My Bloody ValentineやYo La Tengo、Slowdiveなどのバンドに大きな影響を受けたというyeuleのギターサウンドへの愛や熱が今作のサウンド面でのキーとなっていて、重たく難解な内容が多い楽曲に寄り添いながらその想いをエモーショナルに浄化させるポジティブなバイブスが作品全体を包んでいる。アコースティックな質感も交えた歪みの効いたシューゲイズサウンドと近未来感漂うサイバーなエレクトロサウンドが同居した響きは、どこか懐かしく得も言われぬカタルシスを生み出している。
プロデュースはyeule自身に加え、yeuleと度々コラボしている「シンガポールのアンビエント・ボーイ」と称されるKin Leonnが全編に渡り携わっており、さらにYve Tumor、Willow、Poppy、YUNGBLUDなどをプロデュースしているギタリストChris Greatti、そして前作アルバムに引き続きMura Masaがプロディースおよびギターやベース、ドラムの演奏でも参加。2017年にはLLLLとコラボシングル「Memories」をリリース、前作『Glitch Princess』にはTohjiが参加、その他過去作品には日本のアニメや駅のホームの音声を使用するなど、日本との繋がりもyeuleの作品を形成してきた要素の一つだったが、今作でも岩井俊二監督の2004年公開映画『花とアリス』のサウンドトラック収録曲「fish in the pool」をカバーしている。
「私たちはいつも沈黙させられ、この世界のあらゆるものから見放されているように感じる。これを着るな、あれをするなと人はいつも言う。でもあなたがそれを障壁と思わなくなったとき、あなたの生涯は花開く気がする。」
yeuleは常にアウトサイダーとして現実世界を生き抜き戦ってきた。
アルバム『softscars』は9月22日にCD、LP、デジタル/ストリーミング配信でリリース。LPはマーブル・グレイ・ヴァイナルの通常盤と、ホワイト・アンド・ブルー・スプラッター・ヴァイナルの限定盤の2形態で発売。
yeule – softscars
Label : Ninja Tune
Release date : September 22 2023
imagery : Neil Krug
painted text and original drawings : Nat Ćmiel
Pre-order / Pre-save
https://yeule.lnk.to/softscarsAN
https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=13594
Tracklist
1. x w x
2. sulky baby
3. softscars
4. 4ui12
5. ghosts
6. dazies
7. fish in the pool
8. software update
9. inferno
10. bloodbunny
11. cyber meat
12. aphex twin flame
category:FEATURE
tags:Yeule
2023/09/01
アルバム『softscars』より yeuleが〈Ninja Tune〉契約後初となるアルバム『softscars』から4つ目のシングル「inferno」をリリース。 「この曲は傷跡No.9です。この傷跡の中で、私は心の中の青い炎に問う。あなたが青に飲み込まれ、食べられたとき、私に残されたのはあなたの一部だったのです。」 – Nat Ćmiel yeule – softscars Label : Ninja Tune Release date : September 22 2023 imagery : Neil Krug painted text and original drawings : Nat Ćmiel Pre-order / Pre-save https://yeule.lnk.to/softscarsAN https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=13594 Tracklist 1. x w x 2. sulky baby 3. softscars 4. 4ui12 5. ghosts 6. dazies 7. fish in the pool 8. software update 9. inferno 10. bloodbunny 11. cyber meat 12. aphex twin flame
2023/07/13
『花とアリス』から「fish in the pool」のカバー収録 実体のないアレンジは心と肉体の傷跡を解剖する。多次元クリエイター、yeuleがニューアルバム『Softscars』のリリースを〈Ninja Tune〉より発表。リードシングル「daizies」をMVと共にリリース。映像のディレクションはZhang + Knightが担当。そしてカップリング曲には、岩井俊二監督の2004年公開の映画『花とアリス』から「fish in the pool」のカバーを収録。 アルバム『softscars』のCD、LP、デラックス版LPが予約開始。プロデュースはyeuleとコラボレーターのKin Leonnに加えて、Mura MasaとChris Greatti(Yves Tumor、Willow Smith、Poppyなどのプロデュースや楽曲提供、アレンジなどで活躍するギタリスト/プロデューサー)も参加。 「傷跡というメタファーを使って、それぞれの曲を表現しました。心の傷であれ、肉体的な傷であれ、時間が傷を完全に癒すことはない。痛みはなくなっても、傷跡は残っている。私の祖先が経験したことが受け継がれているような気がする。私の人生には常に腐敗や歪みがあり、常に何か悪いものや醜いものがあった。だから傷跡は、自分が守られていること、自分を守るべきことを思い出させてくれる。」 – yeule yeule – softscars Label : Ninja Tune Release date : September 22 2023 imagery : Neil Krug painted text and original drawings : Nat Ćmiel Pre-order / Pre-save : https://yeule.lnk.to/softscarsAN Tracklist 1. x w x 2. sulky baby 3. softscars 4. 4ui12 5. ghosts 6. dazies 7. fish in the pool 8. software
2023/09/15
アルバム『softscars』より yeuleが〈Ninja Tune〉契約後初となるアルバム『softscars』から5つ目のシングルとしてタイトル曲「softscars」をリリース。「softscares」は、アルバムのテーマを体現しており、過去の経験が自身に残した傷跡を記録し、弱さを表現し、本当の自分という人間性を受け入れることを歌っている。 「本当の自分だと嫌われるような気がして、自分をアーティストとしての人格から無理やり切り離し、自分をトーンダウンさせようとしていた。私の心の中は、暗く、痛いほど甘くて、ベタベタしている。そして、私の心の傷跡が真ん中から切り裂かれたかのように、一番大切なものが生まれた。」 アルバムには岩井俊二監督の2004年公開の映画『花とアリス』から「fish in the pool」のカバー収録。CD、LP、デラックス版LPが予約開始。プロデュースはyeuleとコラボレーターのKin Leonnに加えて、Mura MasaとChris Greatti(Yves Tumor、Willow Smith、Poppyなどのプロデュースや楽曲提供、アレンジなどで活躍するギタリスト/プロデューサー)も参加。 yeule – softscars Label : Ninja Tune Release date : September 22 2023 imagery : Neil Krug painted text and original drawings : Nat Ćmiel Pre-order / Pre-save https://yeule.lnk.to/softscarsAN https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=13594 Tracklist 1. x w x 2. sulky baby 3. softscars 4. 4ui12 5. ghosts 6. dazies 7. fish in the pool 8. software update 9. inferno 10. bloodbunny 11. cyber meat 12. aphex twin flame
第1弾としてANORAK!とillequalによる「Re:Re:」がリリース
more
2024年記憶に残っている5つの何か
more
2024年記憶に残っている5つの何か
more