ゆらぎの中で見つけた、ハウスをやるオルタナティブな意義|Kotsu Interview

3/11 渋谷WWW X オールナイトロングセット敢行

 

 

来たる2023年3月11日、ハウスミュージックコレクティブ・CYKの一員であるDJのKotsuが約4年ぶりとなるオールナイトロングセットを渋谷WWW Xで敢行する。コレクティブのメンバーとしてもソロでも気鋭にプレイする彼はハウスミュージックカルチャーの魅力を古今東西に発信する随一の若きDJであり、ダンスミュージックをこよなく愛すクラバーである。コロナ禍で東京から京都に活動拠点を移し、ローカルを通じて新たな音楽性とアイデンティティを構築した彼の記念すべきワンマンに向けての想いを、サポートを務めるmelting bot/Local Worldこと解放新平とKotsuを深く知るCYKメンバーのDNGを交え話を伺った。

 

Text : yukinoise

Photo : Marisa Suda

 

ー本日はよろしくお願いします。早速ですが、昨日の夜はどんなパーティーに行ってました?

 

Kotsu:今週はDJのために東京に来ていて、昨晩はUK出身のDJ・Peachの来日公演で渋谷のWOMBに出演してた。彼女は去年川崎でやったRDC(Rainbow Disco Club)にも出演してたんだけど、DJが良すぎてめちゃくちゃ好きになっちゃったんだよね。

 

DNG:RDCで彼女がプレイした朝4時から6時まで最前列で踊ってたもんね。

 

ー 最前列でハートマークしながら踊っているKotsuの写真を見た気がします。Peachのどういったところに惹かれたのでしょうか。

 

Kotsu:すべて。DJもパフォーマンスも中身も本当に良い。元々ファンだったし彼女がまた来日すると知ってたから、なんで俺呼ばれてないんですか!?くらいのテンションで出演したいです!って営業をかけて、今回のパーティーに出させてもらった。

 

https://notion.online/day-in-the-life-peach/

 

ーすごい。そうやって営業すると出演できるものなんですか?それともKotsuみたいに、挙手した人の趣味嗜好やキャリア、音楽に対する熱量も関わってくるのでしょうか。

 

Kotsu:いや、ないです(笑)。そもそもなんでこの座組みに自分がいないのかって悔しさを感じることが前々からあって。でも僕がちゃんとそういうシーンにアクセスしてなかったりスケジュールの関係だったりとか、出れない理由もちゃんと分かってる。だけど出れなくて悔しく思うのは自由じゃないですか。

 

解放:や、そういう思いを言ってみるのはいいことだと思う。自分はパーティーの主催やブッキングを拠点にした活動をしてるから、たとえば海外アーティストの来日発表をした際にすごい喜んでいる日本のアーティストがいたらチェックして、ブッキング候補として検討に入れることもある。言わなかったら何も起きないけど、言ったら何かは起きるかもしれない。

 

ー自分の領域を示すことで主催者側に気づいてもらえるところから始めなきゃですね。

 

DNG:オーガナイザーのSound Of VastのKnockさんが近いコミュニティの人だったってのもあるけど、それを差し引いてもKotsuは自分の好きな領域をちゃんと表に出すコミュニケーションがすごい上手いなって。実は好きでも呼ばれなくて…って似た経験をしたことがあるDJっていっぱいいると思うんですよ。ただその感情をみんな普段から表に出してるわけじゃない。

 

解放:挙手するアーティストのタイプにもよるね、個性や人間性とか。でも出たいって言ってもらった方がブッキングする身としては嬉しい。

 

Kotsu:僕もたまにブッキングする立場でもあるからその感覚は持ち合わせてる。自分がこういう人間で、こういったDJや表現をしてみたいですって言われたら確かに嬉しいかも。DJ Mixを公開して音楽的にアプローチする手段だけじゃ分かってもらえない場合もあるし。

 

解放:長いこと活動してたら別だけど、必ずしもそのMixと出たいパーティーが音楽的にマッチするか見えないこともあるよね。

 

Kotsu:特に今はひとつのコミュニティにいるつもりはないから、自らアプローチしないと分かってもらえないところを音楽以外でどうコミュニケーションするか考えてる。本来DJは音楽でコミュニケーションしているからプロモーション力が高い人だけが生き残るってのは違うし、そこを重視しすぎたくはないけど。

 

 

ーオーディエンスやパーティーに対して音楽でコミュニケーションしているのは分かります。ですがDJもビジネスのひとつになりますし、どんな仕事でもコミュニケーションは必要。音楽で語るだけじゃ済まされない場面もありますよね。

 

解放:みんな実践していることだし得意不得意はあっても、DJはコミュニケーションでしかないかもしれない。アーティスト個々が持ってる主観性や表現とはまた異なる領域があるのは面白いところ。フロアに合わせていくのか、誰にアジャストしていくのか取捨選択していくのはある意味ライブ感がある。今の時代はいろんなジャンルの音楽をかける方が当たり前で、特にそれが標準的な若い世代だとスタイルやビジュアル的な表現、人との繋がりや文脈みたいなコミュニケーション的なところで自分の見せ方を意識していると思う。逆に音楽的なスタイルが薄くなってきてもいるような。Kotsuは今活動を始めてそろそろ10年くらい?

 

Kotsu:そろそろ8年くらいになりますね。

 

解放:その8年の間にいろんな変化があったでしょ。最初はいわゆるハウスミュージックのスタイルだったとしても、たとえばハウスがルーツになってるデトロイトテクノも自分にとってはハウス的な捉え方ができるんだよね、みたいな(笑)。そうやって曲の解釈もどんどん拡張されてクロスオーバーしていく中では、いっそもうソリッドにひとつの音楽的なジャンルとして曲を繋げていくDJの方が特別な感じもしてくる。そういう点でコミュニケーションをどう考えてるのかは気になる。

 

Kotsu:DNGはよく分かってくれていると思うけど、僕らがCYKを始めた時ってダンスミュージックとしては王道なのに同世代でハウスのDJがあんまりいなくて。当時オルタナティブな存在になっていたからこそハウスを入口に活動する道を選んだ。そういった中でこの8年間いろんなクロスオーバーしたダンスミュージックを素直に受け取ることができたのは、本当にありがたいことだと感じてます。いろんなパーティーに行くことで多様なコミュニケーションを摂取できた。それに対するお返しとして自分なりに取り込んだものをハウスミュージックで実験的に昇華していったのは、オリジナリティの獲得としてすごい良い経験になった。今でこそディスコやハウス、テクノのような80〜90年代から続く旧来的なダンスミュージックの系譜でプレイするDJが増えてきた東京のシーンは個性やセンスを獲得しやすいけど、それで言うと京都も負けないくらい多様なダンスミュージックのシーンがあるから、東京と京都の2都市で活動できてるのはかなりベストだと思ってます。

 

解放:じゃあ他の場所の方がより王道的なスタイルが残っていると感じる?

 

Kotsu:その節もあるし、意外といろんなジャンルのDJたちが同じパーティーに集まることはあまりないのかなって。地方にも広くダンスミュージックが好きな人もいるけどジャンルに焦点をちゃんと当ててるというか。ハウスならハウス、テクノならテクノのマナーにきちんと美学を感じて継承している印象。

 

解放:自分も京都のWest Harlemに行った時、クロスオーバーするにせよDJもマナーに対して時間帯によっての流れやマナーを感じたかな。東京はもっと始めからぶっ飛ばしたり自分に注目してほしかったりする競争率が高いし、プレイヤーがスタイルが多い分そうならざるを得ないというか。10年前のシーンだとマナーを壊したかったのに、逆に今はそれがフレッシュな空気で落ち着く。それは自分が昔マナーがある場で遊んできたから感じられたことだから、マナーを全く体感したことない人だったらどう思うんだろう?

 

Kotsu:僕はその行き過ぎたカオスな状態も平然とした調和もリアリティから離れてる気がしてしまう。一時的な感情を煽り出すような極端な表現も好きだけど、ずっとそのままだと不安になる。ある程度、片方だけでもいいから足にマナーという鎖がついていてほしい(笑)。きっとその自分の中にある感覚は、不安な時代における遊び方のバランスを示しているんだろうな、と。

 

DNG:どこかにマナー的な制限がないと長く遊べないよね、そう捉えるKotsuは本当にハウスの人間だ。

 

Kotsu:ハウスミュージックが時代の中で積み上げてきた安定性を手放したくないというか、自分の考え方や土台にハウスが根付いてるんだと思う。脱マナーを目がけた先に生まれたマナー性を再構築してるというか。

 

ー アイデンティティにハウスが根付いてるんですね。自分自身もフロアでKotsuに出会ってから、ハウスの美学や奥深さに関心を持つようになりました。ハウスを軸にクロスオーバーするキーマン的な同世代のDJだからこそ、マナーがあれどオープンで親しみやすい雰囲気を感じて。

 

解放:王道すぎるハウスだと敷居が高いけどクロスオーバーしてると輪に入りやすくなるよね。たとえばコレクティブのetherも、最初の方にニュースクール・ゲトーと自称するゲトーハウスとか流してたりしてクロスオーバーしてたからハイパーポップ的な自分にとって未知の領域にアクセスできる機会になっていた。

 

Kotsu:ひとつのコミュニティに依存するのが性に合ってないというか、親が転勤族だった幼少期や家と学校以外のサードプレイス的な居場所を見つけるようになった学生時代を過ごしてたのもあってオープンな感覚は常に持っていた気がする。最近自分のやっていることをルーツと重ね合わせながら振り返る瞬間があって、子供の頃から当時通っていたカトリックの教会でいろんな人が交わる場面を見てきたなと。

 

ーオープンな感覚を持つKotsuのおかげで、ジャンルやコミュニティを超えてハウスの良さに気づいた同世代も多いんじゃないでしょうか。

 

DNG:僕らが活動を始めた当時、同世代でハウスのDJって本当に少なかったよね。CYKが始まった経緯のひとつでもあるし。

 

解放:2010年代半ばは、東日本大震災をきっかけに客足が遠のいたり若者が来なかったりとパーティー離れがあったいわば谷間の時代で。だから震災以降の新世代のプレイヤーになるCYKを知ったのは印象的だった。

 

Kotsu:でも初期の僕はCYKの中ではそんなに活動してなくて、ハウスのDJとすら周りに認識されてなかったと思う。

 

 

ーそもそもKotsuがDJを始めたきっかけは?

 

Kotsu:僕らはちょうど震災後に大学進学した世代で、当時の東京はダンスミュージックよりバンドの方が人気だった。ただ元々、高校生の頃にファッションを通じて学校外のコミュニティにいたから世界を限定せずに楽しむ感覚は持ち合わせていて。音楽も同じく、大学生の頃も他の世界を楽しもうと小箱のパーティーにたまたま行ったら、ハウスやテクノのようなBPM120台ならでは音楽が流れていて、過剰に激し過ぎずもしっぽりしてない適度な心地よさに感動したのがDJをやりたいと思うようになった。

 

解放:踊るにも会話するにもちょうど良いバランスのハウスが自分の性にあってたんだろうね。

 

Kotsu:バランス感もだし、当時流行っていたロウハウス/ローファイハウスのようなフロアライク過ぎない家でも聴けるベッドルーム的なサウンドもある側面にもグッときて。

 

DNG:その辺のディスコ、R&Bサンプルから掘っていった曲を現場でかけると上の世代のオーディエンスにも刺さるんですよね(笑)。CYKやKostuの世代を超えてコネクトする面白さはそこにある。

 

Kotsu:日本に限らず世界においても不思議なダンスミュージックのタームにDJを始めたと実感してる。谷間の時代と言えば、その当時は僕の好きなファッションと音楽の繋がりが薄かった時期を経て、好きなスケートブランド・PALACEがTHEO PARRISHとのコラボでTRILOGY TAPESをバイナルリリースしたり、シルクスクリーンスタジオもやってるNYのLQQK Studioがダンスミュージックのパーティーをやったりするようになって。ロシアのGosha Rubchinskiyのサウンドを手がけるプロデューサー・Buttechnoの存在は、ダンスミュージックに感じてた魅力と元々好きなファッションの文脈が自分の中で結びついた決定的瞬間。先日もPLO MANやPowder、Will Bankheadを呼んで行ったC.Eによるパーティーもそうですね。

 

解放:たしか最近のシーンでは服を着るのと同じく音楽に触れたりDJがアーティスト化したりとファッション的な感覚が強まってる一方で、ルーツの文脈をしっかり繋げて提案するプレイヤーであるのがKotsuのユニークなポイント。音楽を啓蒙する役割のラジオDJからカルチャーが築かれたように、フライヤーデザインやメディア的なアプローチを意識して自ら行動できる人はなかなかいない。

 

Kotsu:海外で実現できるなら日本の整備された環境でもできるはずだと常に思っています。今回のワンマンの告知でデザイナーという言葉をチョイスしたのも、自分の文脈を伝えるというちょっとした使命感からやってみたことです。

 

ーコロナ禍で活動拠点を京都に移したのも行動力の強さが出てるというか、思い切った選択だったと思います。移住を決意したのはいつ頃でしたか?

 

Kotsu:今までは海外アーティストが来日したり毎月必ず地方に呼ばれる機会があったりと、外で得た刺激を東京で還元する行為がDJとして良いルーティーンを感じていて。だけどコロナ禍で毎週あったパーティーの現場が完全にストップし、東京で停滞するより違う場所で新たな出会いや活動をしたほうが刺激的だと思い、2020年の夏前には関西に移住しようと決断したかな。

 

DNG:記憶ではコロナ禍の前から移住したいなって話をされてた気が…まだ京都という具体的な土地名は出てなかったけど。コロナ直前のKotsuはDJの本数も多くてタフな状況だったし。

 

Kotsu:コロナ禍前にも京都のWest HarlemでDJしたことがあったし、いろんな音楽がかかれどハウスが根付いてるこの箱がある京都なら精神的な支えになると思ったのと、自然もある環境なら少しリラックスして活動できるな、と。本来2020年に東京でオリンピックが開催される予定だった日本全体の加速的なムードに少し疲れていたし、このまま東京にいると限定的なコミュニティでしか活動できない気もして。

 

解放:オルタナティブなハウスのスタイルを広げるという使命感という点では、コロナ禍で現場が失われたのは大きなトリガーだったね。ある程度確立されたコミュニティに新しく広げていくのは難しいし。

 

Kotsu:東京での広がりを予測しても希望が薄れてたから京都に移住したのは正解で、活動の選択肢が確実に増えた。大阪や神戸の関西圏はもちろんのこと九州や名古屋にも行きやすいし、岡山でもレギュラーパーティーに出演したり四国ツアーを予定できたりと、京都は東京に比べて地理の利便性が高い。平日は割とリラックスできる環境だから無理せず日々を送れて、当初の予定では1年だけ住むはずだったのに気づいたらもう2年半も経ってる(笑)。

 

ー京都を中心に活動するようになって移住期間が当初の予定と変わったように、プレイヤーとして何か大きな心境の変化はありましたか?

 

Kotsu:東京をより俯瞰的に見れるようになった。東京でDJするときはその場のプレイヤーになっているけどいい距離感で観察できるようになったし、平日はもっと現場から離れた視点を大事にできてる。パーティーがあれば毎日遊びに行っちゃうくらい東京には強烈な都市性があるから、パーティーと身体的な距離を保った京都では自分を見つめ直す俯瞰的な感覚が持てる。でも面白いことに、地方のブッキングが増えたのもあってコロナ前とブッキング本数はそんなに変わってない。

 

ーそれはすごい。京都に移住してから世代やエリアを問わずプレイしてる印象だけど、地方でDJする機会が増えて何か気づいたことはありますか?

 

Kotsu:地方でプレイして思うのは「ハウスは街の歩幅」だということ。これは僕の師匠のWest Harlemのシロウさんと話す中で浮かんだ言葉なんだけど、パーティーは街や生活の延長線上にあるものだから地方に行くと現地の方言や生活の営みがフロアにも現れる。ローカル特有の魅力をちゃんと味わえるのがハウスミュージックの醍醐味で、そういったパーティーでハイライトになった曲を東京で流しても地方と同じようにみんな楽しんでくれる面白さを発見できたのも、やっぱり生活の延長線上にWest Harlemがある京都で暮らしたからこその学び。

 

解放:京都のWest Harlemはクラブが日常であることを感じられる箱だよね。特別な非日常感ではなく、まさにハウスならではの過剰すぎず落ち着きすぎないムードと似てる。

 

Kotsu:僕が行く地方の箱はDJの先輩方がプレイしてきた場だから、その話題を通じて世代間のコミュニケーションや結束力が生まれてきて。DJ Nobuさんや瀧見憲司さんと僕のツーマンセットのように、最高の一晩を先輩と作らせてもらえるの本当に嬉しい。

 

DNG:京都に住んでから特にDJが上手くなったんですよ。これにはふたつの理由があって、まずひとつがブッキング本数が増えた中でも多様であり続けてること。先輩方との2人会やCYKとして求められながらTohjiやE.O.U.のようなハウスと違うシーンからも求められるDJはあまりいない。だけど絶対にどうでもいい曲をかけたりしなくて、CYKでもギリギリまで曲を探してその場の正解をちゃんと出そうとするタイプ。一方で、多様性以上にマナーが求められやすい地方でプレイを重ねることでグルーヴキープ力がとてつもなく向上した。多種多様な場を反復2年間もずっと正解を出し続けてたらDJが上手くなるのも、世代やシーンを超えて響くものがあるのも当然だし、そんなDJは世界にKotsuしかいない。

 

Kotsu:DNGが言ってくれたようにただ盛り上げるだけのために選曲するのは基本的に好きじゃなくて、選ぶポイントが必ずある曲を前提にDJしてる。オーディエンスの盛り上がりが自分の選んだ曲の推しポイントが一致する瞬間が好きだし、大事なことだと思う。特に地方は東京ほどクラビングの選択肢がない分、ひとつのパーティーを最初から最後までみんなで作り上げる意識があるから、キープしていかないと辿り着けない盛り上がりや魅力に気付かされることも多い。

 

解放:俯瞰できる姿勢はアーティスト性やアイデンティティにも関わってくるし、東京から物理的に離れたのはいい選択だったね。仕事やキャリアを考えるとなかなか簡単にできることじゃないけど、東京にこだわり続けなくてもいい。東京はメインストリーム/アンダーグラウンド問わずクロスオーバーするスタイルがコロナ禍の新世代によって築かれつつあるから、逆に古き良きマナーを見直す面白さも大切。

 

Kotsu:京都移住で俯瞰できるようになってから、平日にリラックスしてるオフの自分も週末にパーティーでお酒が進んじゃう自分も両方好きでいられる。ひとりで家にいるときは鬱屈してても、フロアでは楽しく笑っているような誰もが持つ二面性を認めることが大事だと、加速的な東京と距離を置く選択した身として思いますね。その二面性の揺らぎ、グラデーションを今回のワンマンで提示したい。ワンマンのテキストにも落とし込んだくらい影響を受けた書籍「複数性のエコロジー」でも現代人の生きる鬱屈した空間や人間関係を自然から学ぶ大切さが語られていて、相互作用するエコロジー的な生態系のように極端に二項対立せずその間の揺らぎをアンビエンスに感じるのが第一歩だと考えさせれて。それってダンスミュージックっぽいし、現代におけるクラブやパーティーの強度と社会的なムードと照らし合わせる作業を実験してみたい。

 

 

ーこれまで積み上げてきた経験やスキルがワンマンでどう花開くのか本当に楽しみです。今回のワンマンではやっぱりハウスミュージックがメインのセットをやる予定?

 

Kotsu:ハウス以外の音楽もかけるけど、オールナイトロングじゃないと実現できないような余白のあるハウス的な手法で挑む予定。多種多様な現場で積み重ねてきたスキルを提示しつつ、ハウスならではのマナーで一晩をキープして作り上げる表現をしてみたい。京都に移住して自分がハウスをやる意義を改めて実感して、ワンマンではいま世界的に盛りあがってるサウンドや求められるスタイルを提示するというより、ブチ上げる瞬間もあれど一体感を強制しないリラックスした文脈を出せるのも1人会の魅力。バーカウンターでシャンパンを開けてる人もフロアの隅で携帯電話を弄りながら踊ってる人も全員来てほしいし、どちらにもKotsuらしさを提示できる音楽がやっぱりハウスだと思う。

 

DNG:WWW Xはフロアが大きい分、1人になれる空間もあっていいよね。かつて1人でクラブに行って楽しかった思い出みたいな自分らしさも提示できるというか。

 

ーアッパーなグルーヴ感も1人でしみじみと楽しむのも選べる自由があるのが今回のワンマンの魅力だと思うし、それが提示できるのも今までKotsuがフロアのいろんなオーディエンスをオープンに尊重してきたからだよね。

 

Kotsu:僕のワンマンを媒介にいろんな人が集結して生まれる独特のフロアのムードを見てみたいし、それくらいの余白を生み出せるのはハウスのテンションなんじゃないかな。東京という加速的な場所でたった一晩じゃ何か違う流れを作るのは難しいけど、とにかくずっとやり続けることでしか何かは生まれないと思う。そのためには環境もすごい重要で、狭過ぎると厳しいからみんなでワイワイしたり1人でゆっくりできる選択肢があるWWW Xが空間的にちょうど良かった。あと、CYKではできないこともやってみたいよね。やっぱりCYKと個人でやるミッションは異なるから、CYKをリスペクトした時に自分はちょっと違う角度で挑戦したい。

 

ー自分らしさを提示するといえば、DJだけじゃなく今回のワンマンも含め様々なパーティーのフライヤー制作などのデザインも手掛けてますよね。デザイン業はいつ頃から始めましたか?

 

DNG:KotsuがCYKに加入したのもフライヤーデザインができるって経緯だった気がする。

 

Kotsu:CYKのフライヤー制作から独学で始めて、毎回作らせてもらうようになったらどんどんスキルも上がって、最近だとCYK以外にも地方のパーティーやMall GrabのEUツアーのデザインも依頼されるようになりました。特に地方は実際に自分がその場に行けなくてもデザインを通じて関係性を繋げられるのが嬉しい。他にもラッパーのkZmくんからアートワークを依頼されたのは嬉しかったというか、コロナ禍以降よりダンスミュージックに接近してきた彼と現場で会うことが増えたし作品にもそれが反映されるようなったのも面白くて、クロスオーバーした文脈との繋がりがもっと世に現れるようになったら、東京のアンダーグラウンドシーンも変化していくと思う。

 

ーDJとは異なるかたちでも音楽を通じてダンスミュージックの文脈を世に広げてるのはKotsuらしいですね。デザインの着想はどのようなところから得てますか?

 

Kotsu:最初は90年代のアシッドハウスやレイヴのフライヤーでよくある2色刷りのローファイな感じを参考にしてた。だんだんできること広がってきた今ではもっとカラフルになって、今回のワンマンのフライヤーは過去1番カラフル。自分の背中、顔の自撮りに日本地図を組み合わせていて、ちょっとしたコンセプチュアルな小ネタも含まれてます(笑)。

 

 

ーワンマンのフライヤーにはtokyovitaminのkenchanがVJとしてクレジットされてますが、彼もCYKやKotsuの文脈を語るには欠かせない存在だと思います。kenchanとどのような経緯でタッグを組むようになったのでしょうか。

 

Kotsu:kenchanは僕を裏で支えている存在で、彼がいるからこそいま東京で活動できてるかも。元々仲が良くて付き合いも長い彼とは音楽のルーツや考え方は異なれど、ひとつのコミュニティに属さずフラットにすべてを捉えているところが一致していて、映像のスタイルもかっこいいからCYKでも常にVJをお願いしています。この前、CYKが出演したタイのWonderFruits FestivalでCYKの歴史を彩ったハイライト曲を自己紹介的にかけて彼が感動していた時は、一緒に歩んできて本当に良かったと感じた。僕自身もCYKを始めてからたくさんの夢を見せられてきたから、フロアで出会った友人やアーティストと共に歩みを重ねられているのはとても豊かで尊い。DJを始めてなかったらこんなに地方や海外に足を運ぶことなかっただろうし知り合う人もいなかっただろうから、ダンスミュージックがいろんな世界を切り開いてくれたんだなと思います。

 

ーもしDJをやってなかったら、どんな別の道を歩んでいたと思いますか?

 

Kotsu:考えたくないな(笑)こんなハッピーな人間にはなれなかったかも。元々感情を隠すタイプだったけど、感情を素直に出せるようになったのはDJやクラビングのおかげ。

 

ーありがとうございます。3/11のワンマンでも、Kotsuを通じて様々な感情や個性があらわになることを楽しみにしてます!

 

また、当日はZINE『Crossbreed』の販売をいたします。以前コロナ禍に突入してすぐにデジタルZINEとしてリリースしたものの次号にあたるもので少量ですがフィジカルでの販売になります。後にデジタルでもリリース予定です。こちらもチェックしてみてください!

 

 

 

 

 

 

KOTSU All Night Long -Reflection-

2023/3/11 23:30  at WWW X

ADV/BEFORE1AM/U23 ¥2,000

DOOR ¥2,500

TIX https://t.livepocket.jp/e/20230311wwwx

 

Kotsu All Night Long set -Reflection-

VJ: kenchan / Toshifumi Kiuchi (LAID BUG)

artwork: Kotsu / YOSHIROTTEN / Shun Ishizuka

 

Over 20 onlyPhoto ID required 

20未満入場不可・要顔写真付ID

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