2023/03/02
2023年3月11日 – 4月2日
神話は空に帰属する。中心のないこの国においては、場所や正統性を持った人物などが、何かからの還元先になりえることはない。もはや、木々の枯葉が、土に落ちることなく、空に雲散していくような──不可解な世界線に立たされている。当展を構想するにあたって、居原田遥氏の活動と『中空構造日本の深層』(1982)の著者、河合隼雄に対し心から感謝を述べたい。
疫病の時代に実利的であったはずの医療用マスクは、もはや顔を覆い隠す理由を人々に忘却させ、日本の特異な民族性を象徴する“マスク”となった。近年、キュレーターの居原田遥による「Masking /Unmasking Death 死をマスクする/仮面を剥がす」展(2022)では、ミャンマーで起きたクーデターの犠牲者を紙のマスクで模ったアーティスト・カミズによる100を越える作品が出品されるなど、不可知な生と死の領域をマスクによって線引きを行う先鋭的な企画があった。この話から地続きに思い浮かぶのは、渋谷東急のMagnetで開催された「渋ゲキプロジェクト(2018)」に出演していた韓国の気鋭ラッパーJvcki WaiがMCのなかで語った「戦争は終わった」の発言である。当時、その発言の背景には大韓民国の文在寅大統領と朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の金正恩国務委員長が3度目の南北首脳会談を平壌で行い、事実的な「実質的な朝鮮戦争の終戦宣言」が行われ、韓国と北朝鮮の国境付近の小売店からは常備されていた「ガスマスク」が、撤去されたと聞く──。
私たちの国はどのような状況に立たされているのだろうか。神話の解体が神経症の増大に繋がったように、表現にはエビデンス(根拠)が求めれる時代になった。国民感情によって芸術における信仰体系の解体が進んでいく中で、権威や正統性は解体され、それらは場所や他の個体に還元されることもなく、空(くう)に雲散していくその様は、人が、人ならざるものに変容しているとしか言いようがない。河合氏が語った中空構造とは、他のものの侵入を許す構造である。芸術もまた、他者の侵入によって成立する一つ運動体系である。
大西晃生はくしゃくしゃになった顔をモチーフに情報社会に於ける他者と自己との関係を仮面(ペルソナ)として描く作家であり、坂爪康太郎は二重螺旋をモチーフに中心が空洞化した生き物と仮面の中庸とも言える彫刻作品を制作している。ロジャー・ジャヌワタは実在性すら曖昧な存在ではあるが、コレクティブの中空性を考える上では外すことのできないアーティストであった。上記で語った、防衛としてのマスク、自らの実存を覆い隠す仮面性、ペルソナ、などと言った民族性や時代性を象徴する多くの仮面の歴史から、無意識化に生活まで浸透した医療用マスクまでを繋げ、多義にわたって重要なモチーフとして扱われる「 仮面」の新たな時代の可能性と、神話学者のカール・ケレーニィが「神話は本来、なぜに答えるものではなく「どこから」に答えるものである」と語ったように、3名の活動から、創造の基盤を模索し、雲散する超越性を、場や正統性をもつ事物へと還元したい。
佐藤栄祐
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開催概要
名称:アルカイの空 – Sky of the beginning
会期:2023年3月11日(土)- 4月2日(日)
会場:TAV GALLERY(東京都港区西麻布2-7-5 ハウス西麻布4F)[080-1231-1112]
時間:13:00 – 20:00
休廊:月、火
出展作家 : 大西晃生、坂爪康太郎、ロジャー・ジャヌワタ
レセプションパーティ:2022年3月10日(金)18:00 – 21:00 ※招待制
大西晃生 ONISHI Akio
1996年岡山県生まれ。2019年京都精華大学デザイン学部イラスト学科イラストコース卒業。主に絵画を軸として、現代美術における絵画とはどのようなものか、またはインターネットをはじめとしたテクノロジーが日常化した社会における自己と他者、人とモノについて考察し作品を制作している。情報が氾濫し虚実の境界が曖昧な現代において、様々な方法を用いて対象を見る事や認識する事について問う。近年の主な個展に「I’m tired」(GALLERY KTO、東京、2022)、「paper craft (human)」(GALLERY KTO、東京、2021)、「paper craft」(KUNST ARZT、京都、2021)、近年の主なグループ展に、「ディスディスプレイ」(CALM&PUNK GALLERY、東京、2021)、「シェル美術賞展 2020」(国立新美術館、東京、2020)。
https://www.instagram.com/chibakeru/
坂爪康太郎 Kotaro Sakazume
1988年生まれ。2012年武蔵野美術大学工芸工業デザイン学科陶磁専攻卒業。多様な相関関係をテーマに、電動ろくろでかたちづくった形状を変形させたり繋いだりすることで「表裏」や「内外」などを感じさせる陶磁器の仮面彫刻を制作している。その他に、倖田來未の楽曲「Dance In The Rain」のMVのマスクデザインやアイドルグループ「仮面女子」のマスクを制作。陶芸教室「P&A Pottery class」の主宰も務める。
https://www.instagram.com/maskhunm/
ロジャー・ジャヌワタ Roger Januwata
1980年生まれ。インドネシア共和国バリ島にて誕生。東京都在住。陰謀論や、パラドックスを扱う匿名のアーティストとして知られる。初個展「紳士服とダンスしませんか?」(2022)では、日本国に伝わる竜神信仰の逸話を元に、浮遊する竜を約5mの展示台で再現、某国大統領の局部を部分的に取り出して浮遊させた作品などを出展し話題を呼んだ。今回がロジャー史上、初のグループショーへの参加となり、過去作、新作を含めた異国情緒のある新作絵画とインスタレーションを出展する。
category:NEWS
2019/02/10
小岩BUSHBASHで開催される「Discipline」の第6回目の詳細が発表。 先日Daymare Recordingsからデビューアルバム『Pain, Ritual & Life』をリリースしたエクスペリメンタル/ハードコアパンクバンドGranule、昨年Black HoleからGranuleとスプリット7インチをリリースしたKLONNS、盟友2組による自主企画イベントが<Discipline>である。 小岩BUSHBASHで毎月開催されるこのイベントは、ジャンルやコミュニティにとらわれない出演者がラインナップされる。表面的なアプローチでボーダーを作るのではない、もっと根幹の部分でのリンクする彼らならではのイベントである。その辺りのことはGranule × LSTNGT × Hegira Moyaのインタビューを読むと理解が深まるかもしれない。こちらを是非読んでほしい。またイベント名にもなっている、昨年リリースされたスプリット7インチ『Discipline』の各種サブスクリプション配信がスタートしている。 Discipline #6 2/22(金) VENUE 小岩BUSHBASH DOOR ¥2,000 (W/1D) UNDER 23 ¥1,000 (W/1D) OPEN 19:00- AIWABEATZ CVN Granule KLONNS lIlI UTOPIA EXPERIMENT flyer by Keigo Kurematsu https://soundcloud.com/tymeslyce/tr-radio-aiwabeatz-17062017 https://soundcloud.com/lililogue/25-sumer-party-vol4-atebisu-batica
2020/03/02
3月20日開催 大阪や京都を中心に関西は様々な文脈が合流し、東京のそれとは違う興味深く新しい動きが次々と生まれている。1月にYves Tumorの〈Grooming〉や〈Halcyon Veil〉からリリースを重ねるCECILIAの来日ツアーをサポートしたΨυχήと、DoveとLe Makeupによるレーベル〈PURE VOYAGE〉による共同開催イベント「Chondrocladia lyra」が3月20日、club STOMPにて開催。 ライブとして玉名ラーメン、CVN、seaketa、TAMA2000、DJとしてDove、Le Makeup、Kazumichi Komatsu、Ψυχήが出演。 Chondrocladia lyra 2020 Mar 20 (Fri) club STOMP OPEN 23:00 Door : 2000yen+1d 【LIVE】 玉名ラーメン CVN seaketa TAMA2000 【DJ】 Dove Le makeup Kazumichi Komatsu Ψυχή Club STOMP 1-13-32 Higashishinsaibashi, Chuo-ku, Osaka-shi, Osaka, 542-0083
2019/03/18
Merzbow、YamieZimmer、Prettybwoy、Downstate、Jigga追加。 3/29、STUDIO VOICEとWWWの共同企画「Flood of Sounds from Asia」が開催。数年前からのキーワードとなっている「アジア」を軸に展開する2つのイベント「In&Out」がデイタイムを「上東」がクラブナイトを仕切る形で、夕方から朝までアジアの音の洪水を体感できる。前回の発表で「In&Out」に、EYEDRESS、CYKのKotsu、台北のEVERFOR、VIDEOTAPEMUSIC。「上東」に、Howie Lee再び、〈SVBKVLT〉のZaliva D、GOOOOOSE、さらにエクスペリメンタルハードコアパンクバンドGranuleがアナウンスされた。 今回はクラブ・ナイトの「上東」に、日本のノイズ・レジェンドMerzbow、ANARCHY の新プロジェクト〈1% | ONEPERCENT〉と契約した”病めるビート”で注目の若手ビートメイカーYamieZimmer、グライムを軸としたトラックメイカーPrettybwoy、UK産トラップ・ベース”WAVE”なDownstate、そしてドバイ拠点のミステリアスなレーベル〈Bedouin〉からデビューのJiggaのA/Vライブが追加アクトとして出演決定。 尚、STUDIO VOICEは2018年9月発売号「flood of sounds from asia いまアジアから生まれる音楽」に続き、3月20日発売の最新号では、アジア特集3部作の第2弾として、「Self-Fashioning from Asia / あらかじめ決められない流儀(スタイル)」としてアジアの”ファッション”をフィーチャーしている。 – DAY TIME – In&Out 2019/03/29 fri at WWW X OPEN 18:30 / START 19:30 ADV ¥2,800+1Drink | DOOR ¥3,300+1Drink TICKET: e+ / LAWSON / PIA / WWW店頭 アジア・インディ・ロック・シーンの交流地点として開催してきたWWWのレギュラーイベント「In&Out」。今回の出演者はXLからのリリースで躍進を遂げ、昨年11月にUKレフトフィールド・ヒップホップの名門レーベル〈Lex〉やから新作『Sensitive G』をリリースし、見事なサイケデリック・ベッドルーム・ポップを披露したフィリピン・マニラの悩める天才 EYEDRESS、skipskipbenben擁する台湾インディポップの最重要バンド「雀斑freckles」のギタリストとしても活躍する蘇偉安(スー・ウェイアン)率いるバンドとしても注目を集め、2月20日には祝祭感溢れるギターリフが中華世界へと誘う「浪漫的中華街」の7インチをリリースする台湾インディポップの至宝「EVERFOR」、そして日本からは古今東西さまざまなビデオテープをサンプリングして映像と音楽を同時に制作しゆらゆら踊れる夜を演出する VIDEOTAPEMUSIC 、DJには東京の次世代のダンスミュージック・シーンをリードするコレクティブ CYK より Kotsu が出演! LIVE: EYEDRESS [Manila] EVERFOR [Taipei] VIDEOTAPEMUSIC DJ: Kotsu [CYK] 詳細はこちら。 – CLUB
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4/8 WWW+WWWβ / 4/9 CIRCUS Osaka
3/11 渋谷WWW X オールナイトロングセット敢行
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