2021/11/12
サウナ / 水風呂プレイリスト公開
Text by 解放新平 (melting bot/ Local World / WWWβ)
Visual by naka renya
2012年にNYCの〈Orange Milk〉からデビューして、本年Foodmanの活動10周年を密かに迎えている。そのこともあって今回はFoodmanの現在に至るまでの文脈を改めてざっくり遡ることにした。
Foodmanはダンス・ミュージックが史上始めて過去を振り返るきっかけとなった10年代前期の80年代リヴァイヴァル(80年代初頭のポスト・パンク~インダストリア等のニューウェイヴやディスコ含む)を背景としたシカゴ・ハウス再興の起爆剤となったジューク/フットーワークを出自としながらも、当時のクラブ・シーンへコミットというより、日本ではジューク全体がオルタナティブなインディ・シーンに浸透し始めたことから、クラブ系から見るとかなりの際物として存在し、実際初めて出会ったのも新宿LOFT企画のSHIN-JUKEで開催したフットワークのオリジネーターの一人RP Booの初来日イベントである。その流れから当時の初期衝動をまとめた初期作品のコンピを〈melting bot〉からリリースしているので改めて聞いてほしい。
デビュー当初から”Kawazakana”のようなベースのない脱構築的なアプローチやジューク/フットワークのようなダンス・ミュージックからインスパイアをされたものの低音を強調しない、ユーモアな遊びあるアンビエントの指向性を持った作風で、本人曰く ”気弱な” 日本人の性格や ”環境”(空気を読むコミュニケーション含む)への調和を重んじる日本の土壌を表し、またそこへの反動も同時かつ自然に兼ねそなえている。
一方、エレクトロニック・ミュージックは80年代ニューエイジ・アンビエント/環境音楽再興の文脈がヴェイパーウェイヴと相まって活性化(ニューエイジ復権とは一体なんなのか)、Oneohtrix Point Neverが時代を牽引する大きな存在へ成長、このポスト・インターネット期(10年代初頭から半ば)のアカデミックなエレクトロニック・ミュージックと一世風靡をしたトラップ含むローカルなダンス・ミュージックの2つの大きな潮流が交わる場として、2010年代に多くの電子ヘッズを魅了した媒体「Tiny Mix Tapes」(2020年年明けにクローズ)がある。このTiny Mix Tapesのテイストを完全に体現したアーティストの一人がFoodmanであり、媒体のプッシュを通じてグローバルな認知へ押し上げるきっかけとなり、2016年にはジューク/フットーワークの日本の第1人者でもあるD.J.Fulltonoとシーンの最重要フェスティバル、ポーランドはクラクフのUnsoundへ出演を果たしている。無論、僕も本媒体AVYSSもTiny Mix Tapesの影響を受けてきている。2010年代全体を振り返るのであればTiny Mix Tapesの2010年代のフェイバリット100を是非見て欲しい。
Foodman @Unsound Festival 2016
https://www.instagram.com/p/BLziBYlg04R/
Foodman、D.J.Fulltono、melting bot @Unsound Festival 2016
https://www.instagram.com/p/BLzSacGAe1K/
その後(10年代後期)もFoodmanは、リヴァイヴァルの文脈が90年代へとシフトしながらアートからダンス・フロアへと色濃くなって行くエレクトロニック/ダンス・ミュージックのモードやレイヴ再興への道筋を辿り、その時折のバイブスとノリを軽快に作品へと織り交ぜながら更新を続け、シーンの中で著名なレーベル〈Orange Milk〉(Giant Claw & Seth Graham主宰)、〈Sun Ark〉(Sun Araw主宰)、 〈Mad Decent〉(Diplo主宰)、そして今回の〈Hyperdub〉(Kode 9主宰)にまでリリースが連なる。
Foodmanを振り返った時にもう一つ特筆すべき点として、本人のツイートに散見され、ユーモアの部分でもある世界でウケる”日本的”なオリエンタリズムがある。10年代ではこれまでエレクトロニック・ミュージックの更新の発信源であった欧州からアメリカへのシフトは新しいクリエイションにおいてアート、ダンスどちらも顕著で、メインストリームではEDMやトラップの世界的流行、アンダーグランドでは脱構築のセンスの源でもあるクィア・カルチャーの台頭(その後一部テクノやハイパーポップへ転化)から、そこから平等性=多様性を訴えるリベラルの社会運動を背景に、ディアスポラ含むアジアやアフリカの経済的発展による音楽市場拡大と共に勢力を増したことによって欧米ではない非中央集権主義的な世界観が構築される中、これまでのステレオタイプなオリエンタリズム自体が崩れ始め、ハイエンド的に表現/紹介されることが多かった日本的なものをFoodmanは日常+伝統的なストリート目線のローエンドで素朴に表現している。ただこのオリエンタリズムは非常に根深く、ハイエンドでもローエンドであっても他国から求められる日本的なものを表現するにあたっては”伝統”や”観光”的なレトロやノスタルジアへの逃避や傾倒する状態は、革新へと向かう中国を筆頭に他のアジア諸国を見たときに寂しさもあるが、大きな流れとして見たときにその段階にある日本を受け止めなければならない現実もある。
超AJIFRYでごめんね pic.twitter.com/0RIPTWuL9A
— 食品まつりa.k.a foodman (@shokuhin_maturi) August 22, 2021
本リリパのリリース作品『Yasuragi Land』ではFoodmanのこれまで以上に日本の風土への思いがより顕著に散りばめられた、もはや食品のフードではなく文化全体の下地にある”風土”へと変化した、日本の環境音楽の最新版であることに間違いはない。リリパではサウナ通でもあるFoodmanになぞらえた温泉的な世界観を想定し、前売特典にオリジナル・サウナ・タオルが付き、クラブ・ナイトでは暖房強めのサウナ@SPREADと冷房強めの水風呂@HANARE(SPREADから徒歩5分内)の2会場に別れ、様々な食品が集まる道の駅をコンセプトとしたアルバムを反映し、ラインナップには京都からNTsKiと荒井優作、名古屋からNEXTMAN、長崎からPower DNA、大阪からD.J.Fulltono、札幌からMidori (the hatch)、兵庫からhakobune、今回のアルバム参加のTaigen Kawabe(ロンドンより帰国)やcotto center、これまでにFoodmanとの共演、共作、リミックス、地元の仲間、ゆかりのある関連アーティストからフレッシュなアーティストを土着、素朴、憂い(潤い)をテーマに全国各地から集めたシンプルかつスペシャルな構成となっている。少しでも『Yasuragi Land』が放つバイブスをデイではゆったりとナイトでは汗をかきながら肌で体感して欲しい。
🥵サウナ・プレイリスト
「サウナの中の灼熱のイメージ、そして水風呂に入る前のワクワク感をイメージしています。最近サウナのセットはサウナ、水風呂、外気浴とそれぞれの時間を短めにセット数を多くしてミニマルに高みに登るようなスタイルが好みです。」- Foodman
🥶水風呂・プレイリスト
「水の波紋を感じながらリラックスしているイメージです。サウナの入り方を知ってから初めて水風呂の中で、それまで体感したことのない感覚に包まれた時に水風呂入りながら一人で爆笑してしまったのを思い出しました。」- Foodman
Local World x Foodman – Yasuragi Land –
SAT 13 NOV 18:00 – 06:00 12H at SPREAD + HANARE
ADV ¥2,850+1D@RA w/ special gift: Yasuragi Land sauna towel *LTD100
DOOR ¥3,000+1D / U23 ¥2,000+1D
ADV/前売 https://jp.ra.co/events/1474555
🍱DAY CONCERT@SPREAD 18:00 –
LIVE:
cotto center
Foodman
NTsKi
Taigen Kawabe – Acoustic set –
Ultrafog
DJ: noripi – Yasuragi Set –
🥵CLUB NIGHT – SAUNA FLOOR@SPREAD 23:00 –
LIVE:
Foodman
JUMADIBA & ykah
NEXTMAN
Power DNA
DJ:
Baby Loci [ether]
D.J.Fulltono
HARETSU
Midori (the hatch)
バイレファンキかけ子
🥶CLUB NIGHT – COLD BATH FLOOR@HANARE* 22:00 –
LIVE:
hakobune [tobira records]
Yamaan
徳利
DJ:
Akie
Takao
荒井優作
artwork: ssaliva
– 前売特典*100枚限定: やすらぎランド・サウナ・タオル *会場にて受け渡し / ADV special gift *Limited to 100: Yasuragi Land sauna towel *pick up at the venue
– 再入場可 *再入場毎にドリンク代頂きます / A drink ticket fee charged at every re-entry
– HANARE *東京都世田谷区北沢2-18-5 NeビルB1F / B1F Ne BLDG 2-18-5 Kitazawa Setagaya-ku Tokyo
category:FEATURE
tags:食品まつり a.k.a foodman
2018/11/02
Palto Flatsから新作EP『Moriyama』のリリースを発表。先行で『Mizuburo』が公開。 今年9月にリリースしたアルバム『ARU OTOKO NO DENSETSU』がPitchforkやThe Guardian、WIREなど多数の海外メディア絶賛され、今年に入って3度目となるアメリカ公演も決定するなど、日本のエクスペリメンタル/エレクトロニックシーンで今一番忙しい男、食品まつり a.k.a foodmanのニューEP『Moriyama』はPalto Flatsからとなる。 先行で収録曲『Mizuburo』が公開中。タイトルの通りに、彼の愛する水風呂をイメージしたトラックとのこと。サウナと水風呂を繰り返し入ることで、訪れるディープリラックス状態を表現している。そのサウナと水風呂についても熱く語ったインタビューはこちら。 11/20にレコードとデジタルでリリースされる。プレオーダーはこちらから。 また12/22には京都のプロデューサーTOYOMUとのコラボイベント『食品まつりとTOYOMUの爆裂大忘年祭』も開催される。 出演者:食品まつりa.k.a foodman / TOYOMU and more! 日程:2018年12月22日(土) 会場:KATA / Time Out Cafe&Diner (両会場共に恵比寿リキッドルーム2F) 時間:OPEN/START 18:00 料金:前売¥2,500 (ドリンク代別)/ 当日¥3,000(ドリンク代別) 問合わせ:Traffic Inc./ Tel: 050-5510-3003 / https://bit.ly/2J4fTSi / web@trafficjpn.com 主催・企画制作:Hostess Entertainment / Traffic Inc. <TICKET INFO> チケットの販売も開始 購入はこちらから https://daibonensai.stores.jp/
2021/06/24
Hyperdubからリリースされる最新作より 名古屋在住のエレクトロニック・ミュージック・プロデューサー、食品まつり a.k.a foodman。これまでにPitchfork、FACT Magazine, Tiny Mix Tapesなどの海外メディアで年間ベストに選出され、Unsound、Boiler Room、Low End Theoryといったシーンの重要パーティーへの出演も果たしワールドワイドな活動を広げる食品まつり a.k.a foodmanが、レフトフィールド・ミュージックにおける最重要レーベルの一つ〈Hyperdub〉からリリースする最新アルバム『Yasuragi Land』より、新曲「Michi No Eki」をMVと共に公開。楽曲にはBo Ningenでの活躍でも知られるTaigen Kawabeが参加しており、MVの監督はHideki AmemiyaとYukitaka Amemiyaが務めた。 ああいう所に行ったら、その場の雰囲気を楽しむことができます。自分が作りたいと思ったのは、ギターとパーカッションのサウンドを、先が見えないながらも今感じられる穏やかな社会の感覚と組み合わせた真摯なアルバム。『Yasuragi Land』はそんな‘平穏’な場所なんです。 – 食品まつり a.k.a foodman 今回のアルバムは〈Hyperdub〉としては珍しくベースが使用されておらず、それによって『Yasuragi Land』は爽やかで洗練された印象を与える。このハイパー・リズミック・ミュージックとも形容できる作品は、2、3のシンプルなツールを用いて制作され、リスナーに脳内でのダンス体験をもたらす。「Yasuragi」や「Parking Area」は、まるで丁寧に分解されたアコースティック・ジャズのようで、「Ari Ari」はマンガに登場するしゃっくりが飛び散ったようなディープハウスだ。「Hoshikuzu Tenboudai」と「Shiboritate」はライヒのようなミニマル・ミュージックのトランス的な要素がアップデートされポリリズム化した楽曲とも表現できる。「Food Court」には機械的なリズムと素朴なメロディが入り組み、「Galley Café」ではキュートな木笛のメロディとマイクロエディットされた木製ドラムが対になっている。Taigen Kawabe、cotto center参加のヴォーカル・トラック2曲のうち、「Michi No Eki」では、Magmaの楽曲のような複雑なロックをカジュアルでデジタルに描き、「Sanbashi」は80年代のR&Bを彷彿とさせる。アルバムを締めくくる「Minsyuku」には、ダフトパンクのトラックから拝借したようなギターが聞こえ、隙間なくもつれ合ったドラムに織り込まれている。 鬼才ぶりが発揮された待望の最新作『Yasuragi Land』は〈Hyperdub〉より7月9日にリリース!国内盤CDにはボーナストラック「Super Real Sentou」が収録され解説が付属する他、輸入盤CD、デジタルと各種フォーマットで発売される。また、輸入盤LPは8月中旬に発売される予定となっている。 食品まつり a.k.a foodman – Yasuragi Land Label : Hyperdub / BEAT RECORDS Release date : 9 July 2021 *輸入盤LPは8月中旬発売 Order : https://smarturl.it/foodman 国内盤特典:ボーナストラック追加収録 / 解説書封入 CD予約 : https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=11814 LP予約 : https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=11815 Tracklist 01. Omiyage 02.
2018/07/18
2年ぶりのアルバム『ARU OTOKO NO DENSETSU』はSUN ARAWのレーベルSun Arkから。 新アーティスト写真 食品まつり a.k.a foodmanは、唯一無二のキャラクターとサウンドで縦のシーンも横のシーンも超えて世界的評価得ている音楽家である。近年は全米・ヨーロッパツアーも成功させた彼が、最新アルバム『ARU OTOKO NO DENSETSU』をSUN ARAWのレーベルSun Arkから9月21日にLPおよびデジタル配信でリリースすることを発表した。 ドラムやベースを大胆に排除した楽曲も多く収録され、「ウワ音だけのダンスミュージック」をイメージして制作したという本作。シカゴのジューク/フットワークにインスピレーションを受けながら、既存のエレクトロニックミュージックの定石を覆し、誰も聞いたことのない音楽を生み出してきた姿勢はそのままに、今までよりエモーショナルでメロディックな表現を取り入れている。 さらにアルバムアナウンスに伴い、先行シングル第1弾となる『MIZU YOUKAN』と『SAUNA』が、Resident Advisorにて先行公開された。タイトル通り水菓子を思わせる涼しげなサウンドが夏にぴったりの『MIZU YOUKAN』と、無類のサウナ好きとしても知られる食品まつりのサウナ愛が情趣漂うメロディーから感じられる『SAUNA』の2曲を聴きながら、食品まつり a.k.a foodmanによるこれまでの数多くのリリースの集大成とも言える本アルバムを心待ちにしたい。 各配信サービスにて新曲『MIZU YOUKAN』『SAUNA』配信&アルバム予約受付中!アルバムDL購入には収録曲をイメージした本人手描きのドローイングによる全14ページにわたるブックレットPDF付き。以下のリンクをチェック! http://smarturl.it/2pq1mv <release info> 食品まつり a.k.a foodman 『ARU OTOKO NO DENSETSU』 リリース日:2018/9/21 ※LP国内発売日未定 トラックリスト 1. KAKON 2. PERCUSSION 3. 337 4. AKARUI 5. FUE 6. BODY 7. MIZU YOUKAN 8. CLOCK feat. MACHINA 9. TATA 10. TABIJ2 11. SAUNA 12. MOZUKU feat. PILLOW PERSON
第1弾収録アーティスト発表 more
レーベル第一弾作品は後日発表
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受け手の自由に寄り添う作品
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