2018/06/21
LAのレーベルMotion Wardから初レコードのリリースが間近に迫っているUltrafogへインタビューを行なった。
Ultrafogは東京で活動するプロデューサーである。現在はテクノを消化したアブストラクトなアンビエントをモジュラーシンセで奏でているが、それ以前はAbletonでよりビートにフォーカスしたテクノを作っていた。彼は同じくプロデューサーのRaftoやDJのMari Sakuraiと共に2014年からIN HAというイベントを幡ヶ谷Forestlimitで不定期に行っていた。僕が彼と出会ったのもこのイベントの3回目だった。彼にゲストとして呼ばれてライブを行い、その後に今度は僕から彼にリミックスをお願いしたりと、なんだかんだ良い塩梅で交流は続いている。彼といると温度感が心地良く、このインタビューもいつもの会話を記録したようなものになっている。話を戻して、Ultrafogとしての活動は2016年に東京のレーベルSolitude Solutionsからリリースされたデビュー作「Faces, Forgotten」を機に状況が慌ただしくなってくる。2017年にカンザスのmdoとのスプリットテープをスペインのレーベルangoisseからリリースし、その勢いで同年にangoisseからリリースした海外勢とangoisseオーナーDavid M. Romeroを日本に招聘し、ジャパンショーケースツアーを主催。各地で成功を収めたこのツアーは彼自身にとっても、日本の電子音楽シーンにとっても意味のある出来事だった。彼の音楽家人生にとって、1つの転換期を迎えつつある現在、今年の頭に行ったNY公演のこと、初のレコードリリースのこと、Ultrafogとしての今後のことなどを聞いた。
– 今年の頭のニューヨークのライブどうだった?
Ultrafog – 2本ライブしたんです。Bossa Nova Civic ClubっていうL.I.E.S.の人たちとかが拠点にしているところと、RVNGがやってるCommendっていうお店でライブしました。
– どういう経緯だったの?
Ultrafog – 最近お世話になってるDJ Healthyが以前NYに住んでて、その人が日本のアーテイストを連れてNYに帰ってイベントやりたいっていう願望があったんですよ。
– Healthyさんのイベントだったの?
Ultrafog – そうですね。で、HealthyさんのNYでのコネクションがとんでもなくて、Aurora Halal、DJ Python、PatriciaとHealthyさんはあの辺のNYテクノ界隈が売れる前から友達なんです。イベント自体も、あんな巨大な、ブルックリンローカルのスターたちが集まったようなものに出させてもらいまして。
– みんな初対面?
Ultrafog – Patriciaは来日したときに観ましたけど、他の人は喋ったことなかったです。
– 現地にはどういうお客さんが来るの?
Ultrafog – 客層は日本と変わらないんですけど、人数が異常なんです。外にクラブを取り囲むように列が出来ちゃって、入れなかった人もいるし。
– 会場のキャパは?
Ultrafog – 100ぐらいっすね。
– じゃあForestlimitより少し大きめ?
Ultrafog – 全体的な面積はForestlimitぐらいですが、バーカウンターがでかいんですよ。朝の3時ぐらいまでずっと客並んでたんですよ。
– ん、朝3時?
Ultrafog – そう。
– 諦めないんや?
Ultrafog – 諦めないんですよ。Facebookで文句言ってるやついるし。「なんで入れねーんだよ」って。それぐらいラインナップが、みんな売れてヨーロッパにツアー行ったりしてる、なかなかレアなメンツだったんですよ。
– そういうことね。ライブ以外も観光とかした?
Ultrafog – 色々な人に会いましたね。Broken CallのNico(Gaul Plus)にも会ったし、Quiet Time Tapesのオーナーがいきなりインスタで連絡してきて「美術館でグループ展やってて、レセプションパーティーやるから来て」って。何にも知らないし、レセプションパーティー行くのってハードル高いじゃないですか?でも、頑張って行って。そしたら僕と同い年ぐらいの人がいて、その人がオーナーだったんです。
– 何をリリースしてるの?
Ultrafog – Huerco S.の30分のドローンとか。あとPhil Struckとか。2つの同じ内容のカセットを1つのパッケージにして売るとこで、1つはあなたの友達にどうぞ、みたいな。
– あーそういうことね。
Ultrafog – あとメキシコのUmor Rexからこないだ出したKohlとか連絡くれて、その人とご飯食べたりしましたね。
– 楽しそう。
Ultrafog – カンザスから来てた人たちと泊まってたんですよ。
– ライアン?(Ryan Leockerことmdo)
Ultrafog – そうですね、C minusクルーみたいな。空港にも来てくれて。僕1人日本人で、他みんなカンザスの人で、泊まってました。トムとジェリーをみんな観てましたね。
– トムとジェリーって新作?現行でやってるの?
Ultrafog – もしかしたら再放送かもです。
– トムとジェリー観て、みんな何を思うの?
Ultrafog – わかんないですけど、みんな大爆笑してました。
– 爆笑する感じなの。
Ultrafog – ライアンめっちゃ爆笑してました。(笑)
– (笑)
Ultrafog – NYでカンザスの人と一緒にいたからかわかんないですけど、思ったのはカンザス出身の人が今めちゃくちゃ活躍してて、UmfangやBeta Libraeにも会ったんですけど、彼女たちもカンザス出身なんですよ。
– じゃあライアンたちと知り合い?
Ultrafog – そうですね、みんな友達です。UmfangがThe Lot Radioを取りつけてみんなでDJしたりとか。
– あ、そういえば、一緒のコンピとか入ってたもんね。
Ultrafog – Huerco S.もカンザス出身でNYに引っ越したりしてるし。Terry radioっていうインターネットラジオがあるんですけど、そこの人たちも来てたのかな。こないだLillerne TapesからリリースしたPontiac Streatorっていう人がいて、Pendantのアルバムに参加してるんです。そいつは今フィラデルフィアに住んでるんですけど、元々はカンザスかシカゴとかの人だったりして。
– 日本からは見えにくいけど、現地では実はいろんな人が繋がってたりするよね。昨日もOrange MilkのSeth GrahamがJesse Osborne-Lanthierとはめっちゃ昔から友達だって言ってたし。
Ultrafog – NGLYとかが「Jesse Osborne-Lanthier会ったことないけど、すげぇかっこいい。ライブ観たかった。」って言ってましたよ。
– エレクトロニック界隈とテクノ界隈と横の繋がりがないとこでも、お互い気になってたりするんよね。
Ultrafog – こんなんでいいんですか、これ(インタビュー)まとめんの大変っすね。
– なんか格言を言わないと良いインタビューじゃないみたいなことは全然ないと思うし、今みたいないつも通りの会話の雰囲気でいいと思うよ。
Ultrafog – じゃあ良かったです。
– そういえば、レコード出るっしょ?
Ultrafog – LAのMotion Wardってレーベルなんですけど、まだ3作しかリリースしてないんですよ。で、去年uonって人がリリースしたんで、日本でもnaminohana recordsとかでも入ってたりしました。uonのはBoomkatも褒めてたし、あれで認知された感じありますね。
– どういう人がやってるの?
Ultrafog – JSっていうDJをしてるJesseって人がやってるんですけど、Amoeba Musicの店員なんです。
– いつ出るの?
Ultrafog – そろそろですね。アートワークはuonがやってくれてるんですよ。
– アルバムになるの?
Ultrafog – 6曲なんで、まぁEPですかね。今年の1月に作った曲なんで、早く出ないと気持ち悪いですね。
– 気持ち悪い?次のモードにいけないってこと?
Ultrafog – 切り替えづらいっすね。
– ライブとの兼ね合い的な意味?
Ultrafog – それはそんななくて、リリースされて人からリアクションもらったりとかの諸々の流れが終わってから、次どうしよっかな〜ってなるんですよね。世の中に出るとまさにリリースされた感じ出るんですけど、まだ自分から切り離されてない感じです。しょうがないっすね、レコードだから。
– レコードは時間かかるからね。
Ultrafog – あそこでやってるんですよ、RubadubっていうAnthony Naplesとかも使ってるとこ。ディストリビューションもそこでやってもらってるんで、やっぱまだ僕だと優先順位が下がるっていうか。もっと有名な人だとパパッとやってくれると思うんです。
– それって入稿順じゃない?
Ultrafog – あれは多分違いますね。はけそうなやつは先にやってますね。
– あー身内を優先させる感じ?
Ultrafog – 身内と業績ある人を優先させる感じだと思います。春に出る話だったんですけど、だんだん後になってきてますね。
– そういえば、シェアルームはどう?(Ultrafogは、CemeteryとRaftoという同世代アーティストと一緒に暮らしている)
Ultrafog – 同世代で住むのはなかなか面白いですね。Cemeteryとかは僕が持ってない引き出しがあるんで、僕が知らないトラップとか教えてくれるし。
– 今後、Ultrafogの展開はどうしていきたい?
Ultrafog – 今は、次自分がどうなりたいと思っているのかをゆっくり考えてて、今回のレコードは最初に出したカセットの延長にあるようなものなので、次は更新したいですね。機材とか作り方とか一度全部見直そうかと思ってて、それをUltrafogの名前でやるのか別の名前でやるのかわからないですけど。
– Daniel Jerkは?
Ultrafog – あれは潰しました。サンクラも消しました。
– そうなんだ。最近どういうのが気になってるの?
Ultrafog – 難しいなー。最近Moor Motherとか聴いてますよ。あらべぇが送ってくれたメンフィスのラップとか。
– じゃあボーカル入れたいって思ったりする?
Ultrafog – あーそれはないっすね。(笑)今はアブストラクトなものを作ってるんですけど、アブストラクトのソースがアブストラクトだとそのままなんですよね。もうちょっとカチッとしたものから、、カチッとしたモノを、、
– なるほど、言いたいことはわかった。それをソースにしたいってことね。
Ultrafog – カチッとしたモノを、ソース、、んーそうっすね。
– そうっすね?
Ultrafog – (笑)カチッとしたモノの残像をソースにしたいっていうか。
– どんだけカチッて言うの。
Ultrafog – (笑)
– トラップとかはカチッとしてるもんね。それを消化したいってことね。
Ultrafog – 摂取するものが変われば変わるかなって。
– そういえば、こないだハイレイくんがHegira Moyaについてアンビエントトラップって言ってたよね。
Ultrafog – 僕、ヒップホップはそこまでルーツにないんですよね。ああいう感じでもないんですけど、とにかく飲み込んだものをもっと胃液で溶かして、消化の作業を今してるって感じです。
– 最近東京で面白いなって思う事とか、そういう人いる?
Ultrafog – その質問に真っ直ぐ答える感じじゃないですけど、なんか東京から離れたいっすね。NYに行ったときに、知らない人に囲まれている状況が心地良くて。東京にいますけど、ちゃんと東京を選んで東京にいるのか、最近よくわかんなくなってて。東京が何か集まる場所なのはわかるんですけど、一回引きで見たいんですよね。ちゃんと東京を好きでいたいんで、ちょっと離れたい気持ちがありますね。
– なるほどね。色々とお話出来て良かったです。今日はありがとうございました。
category:FEATURE
tags:angoisse / IN HA / Motion Ward / Solitude Solutions / Ultrafog
2018/07/10
CemeteryとCONDOMINIMUMの目指す未来。更新と継続。 CemeteryはKota Watanabeのソロプロジェクトである。知り合った頃はCemeteryでもBatman Winksでもないインディバンドのメンバーとして活動を行なっていたが、コペンハーゲンのレーベルPosh Isolationに魅せられた彼は次第にサウンドもスタイルも変貌していく。2015年頃に彼は仲間と共にイベント/コミュニティのCONDOMINIMUMを始動させ、DYGLやCairophenomenonsら同世代のアーティストと共に東京のシーンを築いていった。2017年にはCONDOMINIMUMのレーベルラインであるCNDMMもスタートさせ、CVN、Cemetery、Suburban Musïkの7インチをリリースした。その年には雑誌POPEYEに見開き2ページに渡って紹介されるなど、アンダーグラウンドを超えて、その勢いは拡大するかのように見えたが、現在CONDOMINIMUMとしての動きはほぼ止まっているように見える。その反面、Cemetery個人の活動は絶好調だ。昨年アメリカはインディアナの老舗レーベルSacred Phrasesから『Vessels』、スペインはバルセロナのレーベルangoisseから『excoriation 瘢痕』を立て続けにリリースし、今年は映画『ガーデンアパート / The Garden Apartment』の音楽を担当、さらに今後も新作のリリースが予定されているという。CONDOMINIMUMの現状は一体どうなっているのか、Cemeteryとしての活動は今後どのような動きを見せるのか、渋谷の喫茶店で甘いものを食べながら話を聞いた。 – 食べるものとかいらない? Cemetery – 大丈夫です。食べるものってなんかあります? – あるよ。(メニューを見せる) Cemetery – あ、じゃあ僕ケーキ食べていいですか。 – どうぞ。 Cemetery – ショコラ食べます。お昼食べてないんですか? – いや、食べたよ。(店員さんに向かって)ショコラと、ハニートーストください。えっと、じゃあCemeteryさんでいいですか? Cemetery – Cemeteryさんでいいですかってなんですか。(笑) – 去年の話からで、たくさんリリースしてると思うんだけど。5月にSacred PhrasesからEP、7月にCONDOMINIMUMから7インチ、9月にangoisseからEP。 Cemetery – そうですね。 – リリースがあんなにポンポンポンって続いたのって初じゃない?いろいろ用意していたのが重なっちゃった感じ? Cemetery – そんなに意識的にやっていたわけじゃないんですけど。それこそ多分去年くらいに佐久間さんにも相談したんですけど、海外にどんな感じに音源送るんですかって聞いていて。海外から音源出している人にどうやったら繋がれるのかっていう話を聞いていて、録り溜めてた曲をレーベルに送っていったら、タイミング良く重なってコンスタントになっていった感じです。狙って一気に出そうというのはなかったですね。 – あれはリリース順の感じに作ってるの? Cemetery – そうですね、5月のSacred Phrasesのやつは、Cemeteryを始めた当初くらいに作っていたものです。 – そういうことね。 Cemetery – 機材変えたりとかもあったので。 – 制作環境はどんな感じなの? Cemetery – まず、DAWはCubaseで。そろそろ変えようと思ってるんですけど。でも、慣れちゃったら変えるの怖くて。みんな使ってるableton使いたいなってのはあるんですけど。現状慣れちゃったのでめんどくさいんですよね。 – 絶対そうだよね。また最初から使い方覚えるのもめんどくさいよね。それすごいわかる。 Cemetery – 佐久間さんはLogicでしたっけ? – DAWは録り機っていうか、サンプリングした素材やシンセで作った素材をひたすら使える素材として、伸びたり縮めたり加工してストックをフォルダに溜めて、制作するときに引っ張り出して、並べたり。で、それをライブの時にリアルタイムでポンポン出せるようにもストックしているっていう。 Cemetery – それだとあんまりDAW関係なくていいですね。 – 曲にもよるけどね。これはAya(Gloomy)ちゃんにも話したんだけど、日本よりも中国の方が、自国の文化のテイストをアートワークであったりとか、フレーズに打ち出す人が増えてきて。おそらく日本の方が後だと思うんだよね。それをクールだという空気ってあるじゃないですか。わかりやすい例だと、TzusingのL.I.E.S.から出たアルバムとか。タイトルも漢字だし。 Cemetery – そうですよね。使ってる楽器も打楽器とかすごい多いですよね。 – Tzusingは最初はそうじゃなかったけど、だんだんとあのテイストが出てきて、それが日本にも広がったと思うんだけど。Ayaちゃんも日本語で歌い始めてるし。Cemeteryのangoisseからリリースされた作品のタイトル『excoriation (瘢痕)』とか、収録曲の『Unknown stains in yr memory』も、そういうテイスト入れたのかな?って思ったけど、実際どうかな? Cemetery
2022/07/25
4年ぶりに復活 SOLITUDE SOLUTIONS主催のパーティーSOLIPSITICが4年ぶりに復活。Tour 2022と題し、LSTNGT、Ultrafog、ROTTENLAVA II、 FOREVERTHE WORLDが東京、大阪、名古屋、三都市を回る。 各公演では、その都市近郊で活動するアーティストに出演を依頼。三公演の絶妙な色の違い、その場所、その時でしか味わえない雰囲気の中に立ち上がる、 アーティスト特有の音を多くの人に楽しんでほしいとのこと。また、ツアーメンバーのスプリットカセットが二種類、 ROTTENLAVA II待望の 1st EPも先行で販売され、レーベルの新しいTシャツも各会場の物販で用意されている。 SOLIPSISTIC – Tour 2022 LSTNGT Ultrafog ROTTENLAVA II FOREVER THE WORLD Tokyo 8/6 18:00 FORESTLIMIT michihiko ishidomaru Noel Rio Kodaira Door: 2,000 (inc 1D) Osaka 8/13 17:00 Namba BEARS Shine of Ugly Jewel YUKI PACIFIC Toiret Status YeXuQo Door: 2,500 Nagoya 8/14 18:00 spazio rita W.ANNA.W JACKSON kaki CVN Door: 2,000 (inc 1D)
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